紫原とマネジ
──ああ、サイアク
私は天を仰いで心の底から後悔した。
傘を貸さなきゃよかった、と。(だじゃれを言ったつもりはない)
「畜生ほんっとついてねぇ」
目の前に見えるのは白、しろ、シロ。白銀の雪景色。上も下も遠いお山もどこもかしこもうんざりするぐらい一色に染まってる。
「かーえーれーなーいー」
電車が止まるといけないから部活はナシと言われたって、傘がないんじゃ駅につく前に私は雪だるまになってしまう
「どうしよ…ん?」
突然手もとに影が差した
「何やってんのマネージャー」
「敦!」
「帰んないの?」
「帰れないのっ!」
敦はまたポテチをむしゃむしゃ。アンタなんかそのカラになった袋を被って帰ればいいんだわ。どうせ寮生活で家近いんだから
「傘、ないの?」
「ないわよ」
「貸してあげようか」
「いいの!?」
「うん」
なんか急に敦が良い奴に見えてきた。普段は見た目は大人、中身は子供見たいなのに今日はずいぶん頼もしい。
「ただし半分ね」
「へ?」
「駅まで送るとかめんどいから、ウチまで」
「ウチって…敦の?」
「うん」
またバリリとポテチをかじる。
前言撤回
やっぱ頼もしくもないし良い奴でもない。駅って学校を挟んで寮の反対側じゃんか
「……やっぱりいい」
「なんで?傘無いと帰れないでしょ?」
「だって敦の家よったら二度手間」
「え?ウチで休んでいかないの?」
「へ?」
「誘ってるんだけど、」
「…………」
「…………」
誘ってるとは、ナニを?
さあ帰ろう
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