短編 | ナノ
守衛と子供黒子



「あれ?」

生徒も帰った夕方。
さあ私の仕事の時間だと気合いを入れて生徒昇降口を見回った時だ。
空色のかわいい靴が一足、丁寧に並べてあるのを見つけた

(おかしいな、みんな帰ったと先生から聞いたのに)

私は靴を持ち上げた
左に黒子、右にテツヤと、これまでキレイで整った字で書いてある。

「黒子テツヤ君か」

どれ、探しに行ってやるかな


「テツヤくーん、黒子テツヤくーん」

声のトーンをいろいろ変えながら名前を呼ぶ。されど返ってくるこだま無し。

「テっツヤくーん…」
(マジでいない)

靴の大きさからして2,3年生。
ならば1階か2階にいるだろうとトイレや図書室、階段下の用具入れや保健室を回ったが見つからない。

「教室かなぁ…」

でも教室なら先生が確認してるはず。だからこうして私が戸締まりの点検をしてる


「テツヤくーん、いるかーい?」

やはり返事は無かった。
二年一組、いない。
二組も、いない
三組は……

「いないかなぁ……あ、」

教卓の下に不自然な影があった。アレかもしれない

「テツヤ君みーっけた」

空色の髪をした小さな男の子が寝ていた。スースーと寝息をたてて


「ほら、起きて。帰ろうか」

肩をゆさゆさと揺らして起こす

「んー…」

するとテツヤ君はもぞもぞと体を起こした。
ずっと小さく丸まっていたからいささかつらそうだ

「あれ?皆は…」
「帰ったよ。あとはテツヤ君だけ」
「ボクだけ……」
「そう、君だけ」

すると教卓の下から飛び出して辺りを見渡した。

「ほら静かでしょ?」

足音ひとつ聞こえない教室や廊下。
あるのは風がガラスを叩く音だけ

「みんな、いなくなっちゃ…ふぇ…」
「あらあらどうしたんだい」

テツヤ君は大粒の涙を流して泣きだしてしまった。よく見ると目が赤く腫れている。教卓の下で寝る前にも一度泣いたのだろうか

「かくれんぼ、してたの、にっ」
「うん」
「ボク、だけ…見つけてくれな、っ、くて……ひっく」
「うん…」

わんわんと泣いて言葉が繋がらない。
そういえば私にもあったなぁこんなこと

「大丈夫よ。帰った皆の代わりに守衛さんが鬼をやってたの。だから今、テツヤ君は見つけられたのよ」
「ホント?」
「ええ」

テツヤ君と同じ目線になるようにしゃがんでにっこり笑いかけた。

「ほら、おいで」

そしてこの胸に飛び込んでおいで

「守衛さあああぁぁああん」

大丈夫
どこにいたって、何をしてたって私が見つけてあげる



夕暮かくれんぼ


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