短編 | ナノ
赤司の天才的解釈




「何読んでんの?」

赤司の家に遊びに来たのに、コイツはハードカバーの薄い本を時折しかめっ面しながら読んでばかり。
友達ほったらかしにしてまで読み更ける本の内容が知りたくなった

「ああコレかい?"あかずきん"だよ」

挿し絵の部分をちらりと見せてくれた。なるほど確かに少女と狼がかかれていた

「それって誰でも知ってる童話だろ?楽しいか?」
「いや、それが読み始めると止まらなくて…」
「うっそだぁー」

今時の小学生だって興味持たないぜそんなの。
笑ってやると、赤司の目が光った……ように見えた

「おまえ、あかずきんという悲劇のヒロインを愚弄するのか」
「……へ?」

あかずきんって悲劇だったっけ?

「いいだろう。知らないなら教えてやろう。あかずきんの全貌を!」

……いや、なんでそんな輝いてんの


 ***


「あかずきんに出てくる少女はな、赤頭巾という名の防災頭巾を母から授かったのだ。
そして母から手土産をたくさん詰めたバスケットを持たせられて超ド田舎のお祖母ちゃんの家まで疎開に行くという戦時中のお涙頂戴な話なんだ」

「……………はあ、」

「しかもあかずきんの疎開先である祖母は極度の人間不振だったため人里から遠く離れた森のなかにすんでいて、あかずきんは多くの子供達と共に人里に来たあと、1人で森の奥にはいっていく」
「……それで、狼とあうのか?」

急に非現実的になるな。

「いやいや。それは童話っぽくさせるための演出上の都合で、本当は狼ではなく敵国の兵士だったんだよ」

外国人ってのは彫りが深いから、昔の日本人は彼らを狼と例えたんだね。と、赤司は狼の挿し絵を見せてくれた

「その飢えた兵士…狼はあかずきんを言い包めてバスケットの中の食料を食いあさったあげくお祖母さんの家まで聞き出したわけさ」
「へえ」

なんだか、そんな話だったように思えてきた

「狼は一人暮らしのお祖母さんを殺したあと家の食べ物で腹一杯になるとその家を我が物顔で使いはじめる」
「そこにあかずきんが来るわけだね」

赤司は無言でうなずいた

「満腹で冷静さが戻った狼は、あかずきんがそれはそれは美しい少女であることを知るんだ。当然、食欲だけでなく性欲も旺盛な狼にあかずきんは襲われてしまう!
そしてあかずきんの清潔無垢な体に傷がつくまさにその瞬間、間一髪で武装した農民が助けに来てくれるんだ」

少女の貞操が守られたんだから感動ものだろ?と赤司は言うが、それは単にオマエが幼女好きなだけなんだと思う

「暮らす場所をなくした少女は縁あってその農民と戦争が終わるまで本当の家族のように暮らしたわけさ」

最後に赤司は本を閉じた

「どうだい?」
「……いやもうオマエの発想力に脱帽だよ(赤頭巾だけに)」



あかずきん
(どうだいボクの渾身のネタは)
(それ嘘だったの!?)
(あたりまえじゃないか)
(天才の考えはようわからん)


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
なつ様より赤司のギャグでした

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