短編 | ナノ
黒子警部と女怪盗





「動かないでください」

それは唐突だった。
壁にペッタリと体をつけて気配を殺し、頭だけを動かして逃げるタイミングを図っていた、その時のことだった

「動くと撃ちますよ」

カチャリとリボルバーが回される。
完璧に隠れていたはずなのになぜ見つかった。
そもそも人が居ないことを確認してからここに身を潜めたはずなのになぜ見つかった

「さあ早く盗んだサファイアを帰して下さい」
「嫌よ。この青色サヴァンはワタシのモノ。欲しかったら奪ってみなさい」

私はビジネススーツの内ポケットから生のサファイアを取出し口付けを落とす。

「よほど射ち殺されたいようですね」
「あら、連れないわねぇ」

小柄なこの男は、腕を精一杯のばして銃口を私の頭にピッタリつけた。

「それにしても、貴方っていつからワタシの後ろにいたの?此処まで接近されたのは初めてよ」

つねに前後左右上下四方八方に気配を配って慎重に歩いて居たはずなのに

「あなたが非常階段を降りた後アタリからずっとツけてました」

つまり宝を奪って直ぐってわけね。なかなかやるじゃい。

「さ、そろそろ射ちますよ」
「良いのかしら?今射ったら宝は真っ赤に染まっちゃうけど」
「!卑怯な人ですね」
「こういう職業ですから」

ウフフと私は笑う。
目の前の男は苦虫を潰したような顔をした

「射たないのなら、帰ってもいいかしら」

私はサファイアを持ってないもう片方の手で目眩ましの閃光弾を弾けさせる。
もちろん、光が放たれる前に私はちゃんと目をつぶった。

「それじゃあね」
「あ、まてっ!」

男の叫ぶ声を尻目に、あらかじめ開けておいたマンホールに飛び込んだ。
そしてマンホールの蓋をしっかりロックを掛けて敵の侵入を防ぐ。

「─────!」

地上で男が何か叫んでいるがもう気にしない。

「……ああそういえば」

結局あの人、引き金を弾かなかったな。
ポーカーフェイスを保って性欲全然無さそうに見えたのに、やっぱり私の誘惑には適わなかったと言うことかしら



所詮人の子


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