桃井と補欠選手
青峰はズルい。
何度そう思ったことか、もう数えるのもめんどくさい。
青峰はズルい以前ベンチで奴の試合を見てたときに呟いた事があった。アイツの才能に嫉妬してつい言ってしまったんだと思う。他意はない。いつもサボってるくせにここぞという時ばかり、まるで救世主が如く現れるアイツに嫉妬してたんだ。
「なあお前もそう思わないか?」
たまたま隣で記録を取っていた桃井にぼやいた。ただ聞いてほしかっただけ。
「あたしは思わないよ」
別に理解してほしかったわけじゃないけど、まさかそんな返答が返ってくるとは思ってなかった。鉛筆の動きが止まる気配なんてまるでしない桃井は平然と言った。
「青峰君はズルくない。それ相応の犠牲を払ったもの。あなたにはわからないでしょうけど」
その毒づいた言葉に対して例えば?と、つい口から出そうになったのをすんでで止める。
「ああ、天才の苦労話なんてこれっぽっちもオレには分からないよ」
だって生きてる次元が違う。
凡人と天才を比較するのが間違ってる
本当の彼を見つけてよ
青峰君はズルくない。
なんで皆わかってくれないの?
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