短編 | ナノ
黒子とデート



私には彼氏がいる。同じクラスの黒子テツヤ君。もちろんこっちからコクった。
誰からか褒められるわけでも自慢するでもなく、こっそり黒板を消したり花に水をやったりいっぱいになったゴミ箱の中を片付けたりと、その優しさに惚れたのだ。今では下の名前で呼びあう程になった

 ──ただ一つ問題が。


「テツヤくーん…」


一緒にいると、いつのまにかはぐれているのだ。話し掛けようと隣を向くと居るはずのテツヤ君がいない。今日もまたいない。どうしようどうしよう、不安になる

「大丈夫です、ボクはここにいますから」
「ほぎゃあ!?」

どこだどこだと遠くを探していたら、突然隣で声がした。

「いつからそこに!ってかどこ行ってたの!?」
「ずっとここにいましたけど」
「ウソぉ」

そんなバカな。
自分より数センチ高い男子が隣にいて気付かないはずが無いのに

「すぐ見失っちゃうなんて…なんでー」

もしかしてテツヤ君への愛が足りないから隣にいることすら忘れちゃうのだろうか。そう考えると急に悲しくなってきた

「そんなに落ち込まないでください」

慣れてますから。とテツヤ君はほんのり笑った。

「でも…」
「そんなに心配なら、手でも繋ぎましょうか」
「へ?」

テツヤ君は私の解答を待たずに、自分の右手を私の左手に重ねた。彼の手の平はひんやりしていて気持ち良い。

「わっ、私すごい汗ばんでるよ!」
「大丈夫、普通ですよ」
「握力も強いんだよ!」
「ボク、男ですよ?女の子に握りしめられて悲鳴をあげるほどヤワじゃありません」

テツヤ君は何を言っても微笑んで受け流していった。
そうだ、その心の広さに私は惚れたんだった



感情の再確認


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