黄瀬に告白
「ずっとスキでした。付き合ってください」
告白された。目の前にいるのはおそらく学年一だろうと言われている美女。
知的で賢く運動神経もいいうえに、そういう言動が全然嫌味に聞こえないっていう不思議。
「やっぱり、私…ダメですか?」
「いや……」
そんなことない。とは言えなかった。
確かに校内一の彼女とモデルのオレだったら、まさに絵に書いたカップル。誰もが理想にする憧れだろう。
おまけに彼女はオレをスキだと言う。オレもキライじゃない。
「ねえ黄瀬君」
でも、この告白に答えを出すことができなかった。"いいよ"の3文字が言えない。
これでいいのか、これでいいのか黄瀬涼太。
自分に問う。
皆が憧れるモデル業で毎日輝いて、好きなバスケをやりたいだけやって、それでいて彼女をもらうなんて贅沢過ぎやしないのか。
「聞いてるの?」
オレが一心に考えてるなか、彼女はずっとオレを見上げている。それはもう心配そうに。
その上目遣いがオレを誘って……
って、なに考えてんだオレ。
これではまるで体目的みたいだ。最低極まりない。
「………オレは、」
「うん」
なんだろう。
彼女を見つめていると、綺麗だなって思うのと別に、心に突き刺さるものがある。
綺麗だったら付き合うのか。
頭がいいから付き合うのか。
キライじゃないから、付き合うのか。
わからない
分からない
解らない
「オレ、は……」
本当はどうしたい。
そのあとが続かない
「無理しなくていいのよ」
彼女が微笑んだ。
いつものようにほんわりと。
その時、オレは初めて自分の顔が歪んでるのに気付いた。
最悪だ、オレ
「ごめん」
「うん。いいよ」
「ごめん…」
音になったのは、別の3文字。
なのに彼女は笑っていた。
上手なフリ方を教えて下さい
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