短編 | ナノ
花宮といじめられっこ



世の中には虐められやすい奴というのが存在する。気が優しかったり頼みごとを断れない奴だったり、なんかトロくてウザかったり。

「…お前何してる?」

そんな"虐められっ子"という奴が、今目の前にいたりする。

「さがし物よ」
「あっそう」

目の前にいる女は紅茶色でウェーブがかった髪をクチャクチャに乱して、ゴミ箱を漁っている。

「ねえあなた、そこで突っ立っているなら一緒に私の持ち物探してくれない?」
「なんでオレが」
「だってふたりの方がはかどるでしょう」

意味分かんねぇ。
でも、なぜかオレは掃除用具が収納されてるロッカーを開けて中を見てる。

「…なあ」
「なに」
「生徒手帳があったんだけど」
「ああ、それも探してたのよね。ありがとう」

女は俺の手から奪うように取ると、さっさとポケットにしまった。

「はっ、オマエいじめられてるのか」
「だからなに?」
「いや…似合わねぇなと」

どちらかというと虐める側にいそうな性格してんじゃん。

「人は見かけによらないのよ」
「へえ。じゃあオマエがいじめられてる理由は?」
「別に大したことじゃないわ。バスケ部の悪童とヤったとか、いっぺんに23人の男と付き合ってるとか、その他諸々男絡みの身も蓋もない噂が原因よ」

はあ。と女はため息をついた。
しかもバスケ部の悪童ってオレのことじゃないだろうな。

「つーか探すったって、あとなに見つかってねーんだ」
「携帯。さっき電話かけたら繋がったから、多分折られてはいない」
「おいおい」

どんないじめられ方してんだよコイツ。よく平気な顔してられるな。

「今回はまだいいほうなのよ。この前なんて携帯のデータ真っ白だったから」
「………」

そんな事をするいじめっ子より、それを騒ぎ立てることなく納得していくこの女が何より怖いと思った。

「タフな女だな」
「違うわよ」
「いじめられ体質」
「私をそこら辺にいる根暗女と一緒にしないで」

本当のこと言ってやっただけなのに、なぜかキレられた。

「そうか分かった」

容姿端麗で自我もはっきりしてて、どう考えてもいじめられる要素がないはずなのになぜか虐められてしまう理由。

「オマエは物凄い高飛車なんだな」

その偉そうな口振りが、皆にウケがよくないんだよ。

「知ってるわよそんなこと」

女の顔が真っ赤になった。
ああ、面白いオモチャを見つけたぞ



いじめっ子いじめられっ子
(明日からオレ専用な)
(あたしが?ざけんじゃないわよ)


前へ 戻る 次へ (12/33)
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -