短編 | ナノ
伊月と幼なじみ



帰ろうかと声をかけられた。クラスの女子が騒いでいたが気にすることはない。いつもの事だから

「いいよ、俊」

一応幼なじみな私達は、部活が無いテスト期間だけ恋人っぽいことをする。
「予行演習だよ」が私達の口癖だった

「桜もそろそろ散っちゃうね」
「そうだね」
「俊は部活いつから?」
「明後日から」
「へえ」

じゃあ明日までだねって、そんな当たり前の言葉がなぜか喉につっかかった。

「…ねえ見てごらん。この通りはちょうど見頃だよ」

話を戻されたので上を見上げる。

「わぁ…」

余計な緑色がなくて、役目を終えた花びら達が風と踊っている。一言で言うなら神秘的……

「あれ?」
「どうした?」
「いや、花びらの中になんか…」

青や黄色や緑など、人工的な色がちらほら紛れている。それはさくら通りを進むにつれ多くなっていた。

「ああ、あれだよ。あそこのチャペルで結婚式してる」
「ホントだ。俊は目がいいね」

新郎新婦が仲良く腕を組んで花道を歩いている。
小さな教会だけど、皆笑顔で出迎えててとても楽しそう

「いいなあ…」

私も、ささやかでいいからあんな風に幸せで囲まれた結婚式をあげたいな。なんて。

「じゃあ約束をしようよ」
「え?」
「オレが立派になったら迎えにいくから」
「俊…」

それってつまり。

「答えはその時でいいから」
「……」

これは"ごっこ"じゃなかったの?



貴方はいつも計画的
(答えはもう決まってるのだけど)


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