10万打企画 | ナノ
01




『いたかー敦ー』
「んー全然見つかんない」
『それは困ったな…』


氷室先輩が東京見物したいからと出ていって数時間。そろそろ戻ってきてもらわないと監督の唸る竹刀が折れそうなんだが。

『落ち合い場所ったって広すぎだろ…』

東京来てまでこんなトコ来るとか、どんだけバスケ好きなのあの人

「ここら辺に居るっていってたんだけどねー」
『一応探しに行くか敦……って、何食ってんの』
「ん〜」

ぷっちゅの次はパッキーかよ。さっき昼飯食べたばかりなのによう食べる。

「アララ、う〜ん……も少しパンチがほしい味だわー。名字ちんあげる」
『レバー味のチョコはさすがに全力で断る』

確かにオレは甘いもの好きだがそんなマニアックな食べ物はお菓子として認めん。だいたいどこで売ってんだそんな味。

「てかそれより…うーん、見つかるかな〜?」

会場にごった返す人、ひと、ヒト。
携帯に連絡すればすぐなのに、なぜあの人は文明の利器を持ち歩かないんだ。いや持ち歩いてるかもしれないけどなぜ電話に出ない。




 ***




「あ、いた…」
『え?』

敦が遠くの一点を見つめて目を離さない。あっちの方角はたしか決勝をやってる…

『あの人マジで出場してんの!?』
「みたいだねー」
『でもウチってそーいうの禁止じゃ…』
「あ、そうなんだ。じゃあ教えてあげないとね」

すると敦はずっと眺めていた方に向かって歩きだした。

『ちょ、敦待って…ま……』
「名字ちんはゆっくりでいいからねー」

ひらひらと手を振り小さくなってゆく背中。人混みから抜け出せなくなったオレを置いて、敦はその巨体を盾にずんずん進んで行きとうとう見えなくなった。

『デカいってズルい…』


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