10万打企画 | ナノ
最も簡単な肯定方法


ここはアメリカの某大都市のとあるバーガーショップ。
大学を抜け出してくる頃にはちょうどお昼時、店内はネイティブアメリカンたちのだらしない英語がたくさん行き交っている。

「わあ凄い」

日本とはあまりにも違うその光景に思わず息を呑んだ。いつ来ても慣れない私は隅っこの席に座るので精一杯。店内をまじまじと見回すのもどうかと考えた私は窓越しに遠くを眺めたままひたすらシェイクを飲んでいた。

「May I set here?」
「あ、どうぞ…」

隣座ってもいいかと尋ねられて、私はつい日本語で返してしまった。よく考えればここはアメリカ!なのに日本語で答えるとかバカ丸出しじゃないか。

「あっ、えっと…Sure……」

かなりまごつきながら英語で言い直した頃には、もう隣に男の人は座っていた。ああ恥ずかしい。
私は誤魔化すようにシェイクを一気飲みした。

「〜〜〜〜っ!」

頭にキーンと響いて悶えてしまう。そしたらから鼻で笑う音がする。

「いい加減慣れたらどうだよ名前」
「あっ!大我!!」

痛い頭を押さえて隣を見れば、可笑しくてたまらないといった様子の大我がいた。

「なんで意地悪するのよ!苦手だって言ってるのに」
「んなこと言ってたらいつまでたっても英語話せねぇぞ」
「余計なお世話よ」

高校生に指導されなくちゃいけないほど私の英会話はぐだぐだでは無いもの。
私はまたシェイクを口に含んだ。

「昨日はコーラだったな。今日は何飲んでんだ」
「ミルクシェイク。大我にとっては美味しくないものでしょ」
「あ?なんだよその言い方」
「だってそうじゃない」

人が飲むもの食べるものに片っ端から口出しばっかりするんだもの。いつもいつも。

「まだ嫌いだなんて言ってねぇだろ」
「"まだ"?」
「………」

大我は黙ってしまった。否定はしない、そんなところが癪に触る。

「いいわよ」

そっちがその気なら、こっちにだって考えがある。
私は残りのシェイクを口に入れた。

「ちょっ、なに……ん、」

大我の、汗が滲んで乾き切ってないシャツを掴んで自分の方に寄せる。
そしてそのまま唇を重ねた。

「……………」
「……………」

いくらイスに座ってるといっても自分より30センチも高い彼を引き寄せておくのはちょっと辛かった。

「どう?お味は」
「……嫌いじゃ、ない」
「よろしい」

真っ赤になった大我の顔。
それがまた可愛い。




最も簡単な肯定方法
(もう一口どう?)
(シェイクは嫌いだっ!)


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