10万打企画 | ナノ
そうかもしれない




「帝光、メンバーチェンジです」


第3Q後半、ダブルチームを組まれてフラストレーション溜まりまくった灰崎はベンチに下げられ、代わりに名前が入ってきた。そろそろヤバくて灰崎のヤローが何しでかすかハラハラだったから、この交換はナイスタイミングだ。


「よーし行くぞー」

「くんの遅ぇよ名前」

「そればかりは征十郎に言ってくれ」


オレにはどうもできん。と言う名前は軽く体を動かしながらコートの中へ。灰崎とすれ違う瞬間、ハイタッチと見せかけてグーが飛んでったように見えたが名前はまったく気にとめず避けた。灰崎は行き場のなくなった拳をベンチに押しつける。ありゃ完全にペナルティくらうな。


「慣れてんなぁ…」

「ふっ…あんな分かりやすい攻撃、誰が食らうかよ」

「そーかよ。ま、今日もよろしく」

「任しとけ」


こつん。オレらは握った右拳を重ねた。これをやると試合が上手くいく気がする。ボールが欲しいと思った時この手を開くとそれは自然と飛んでくる。赤司から来るのよりも痛くない柔らかなボールだった。同じもののはずなのに。


「あ、それと大輝」

「あん?」

「灰崎いなくなったから、ダブルチームはお前だよ」

「おっけー」


名前の言うことはよく当たる。路上で占い師やってるババアよりも当たる。


「あと、困った時はパス出せよ」

「わかってるよ」


お前はオカンか。あーだこーだと心配し過ぎなんだよ名前は。でも悪い感じはしなかった。頼り頼られ、オレは独りじゃないと言うのを教えてくれる。





「……くっ」


キュッ、キュッ、とバッシュの音が心地よい…が、アイツの言う通りダブルチームはオレだった。一歩動けばファールを食らいそうなぐらいキツい。


「持ちすぎだ大輝よこせ!」


緑間にスクリーンで手伝ってもらった名前はいいタイミングで声をかけてくれた。ボールは迷いなく名前に渡すとあっという間にソレはリングをくぐった。
ホントいつも思う。コイツは先を見えるのかと。だがそう言うと名前は「赤司にはかなわない」と頬を掻きながら困った顔をするのだった。ケンソンもするこいつはマジ良い奴。




ビ───ッ!

ガヤガヤと煩い体育館にブザーが鳴り響く。試合が終了した合図だった。もちろん帝光の勝ち。特に名前が入ってからの点の伸びが良かった。赤司だけでもボールはよく回る。しかし名前が加わることによって、"欲しい"と思った所にボールは直ぐ来るのだ。


「オレさぁ、やっぱお前のこと好きだわ」

「ああ、うん?」


ハイタッチを皆と交わして勝利の喜びを分かち合う名前の後ろに回って肩を抱く。
名前は分かってるような、分かってないような曖昧な返事をした。


「だから、オレはお前が、」
「好きだって?」


知ってる。と名前は笑った。
なんだ分かってたのかよ。


「なんでも分かるよ大輝のこと」

「なんで」

「だって、考えることが一緒だし」


それはオマエもオレが好きってことか。少し照れくさそうに頬を赤らめる名前。オレも同じ顔をしてるって?




そうかもしれない

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