麻痺したココロ
赤司は全知全能だね、お前には誰も適わないや。と昔言ったことがある。でも赤司は不機嫌そうにオレを一瞥してすぐに読書へと戻ってしまった。
なぜ?本当のコトを言っただけなのに、なにか不都合でもあっただろうか。そう訊ねると彼はこう答えた。
「君は人間だと言われて喜ぶのかい?」
それもそうだ。
コイツが何事でも頂点の座に君臨するのは赤司にとっては当然で、息をするのとたいして変わらない事だ。
そんな当たり前を今さら訊ねられても困るだけなのは当たり前なのだ。
そんな会話をして早二年。
オレと征十郎は京都の高校に進学して、幸運にも同じクラスになった。
現在、そんな何でもないはずの昼時……のはず。
「名前は、まだテニスをやるのかい?」
「やるよ。なんで?」
「いや…」
昼食を食べながら唐突に、征十郎はそんな話をふってきた。ああ、今朝に入部届けが配られたから気になったのか。
オレはその入部届けに迷う事なくテニス部と書いた。もともと運動好きといのもあって、最初は征十郎にバスケ部に誘われたときはどちらにしようか迷ったが、テニスを選んでいて良かったと今では思う。だって全国制覇できたのだから。
「名前はマネージャーでもやったらいい」
「は?」
どこのマネ?そんなの聞かずとも分かった。征十郎はバスケ部マネージャーに誘ってるんだ。
「でも、テニス……」
「君は僕とは居たくないのかい?」
「そんなこと」
それと君とは比べることじゃ、無いと思うんだけど、でも…
「征十郎の言うことに、間違いは、ない…から」
オレは、うん、と首を縦に動かした。
「よろしい」
征十郎は満足顔で食事を続けた。
これで良かったのか?そんなことオレが考えるべきじゃない。征十郎には間違いなどない。
オレの、教典だ。
麻痺したココロ
(ボク以外の頂点など認めない)
(君の血肉も手足もなにもかも、ボクのモノだ)
次へ 前へ (13/26)