10万打企画 | ナノ
02

ノック無しでドアが開けられた。
俺が入ってきた時以上の俊敏さで視線が一気にそっちに向かう。


「やっぱり此処にいたか」


振り向かずとも誰の声か直ぐにわかった。


「お前っ、何しに来た!」


誠凛の主将が今しがた入ってきた男に向かって叫んだ。因縁の相手だ。冷静に対応しろというのも無理な話である。


「ああ?別におまえらに用はねぇよ」


あるとしたら…と面倒臭そうに呟いて部屋の奥へ入ってくる。カツコツという足音だけが部屋中に響いた。


「おら、さっさと帰るぞ名字」


イライラマックスの声が頭上から降ってくる。それと同時に片腕を強く引っ張られて半分無理やり立たされた。
巻きかけだったテープがだらしなく垂れる


「まあ落ち着けよ花宮」
「木吉…」


立たされた勢いでよろめいた俺を腕の中に収めた花宮は、のほほんと微笑む木吉をひたすら睨んだ。


「止めろよ花宮、木吉がおまえに何したってんだ、よ…」


一方的に敵意を向けられた木吉がなんだかだんだん可哀相になってきて、花宮にダメ元で言ってみた。
しかしギロリと睨まれそれ以上の言葉を続けられなかった。
怖いよ花宮…


「行くぞ」
「わわっと、」


未だ俺をがっちりホールドして放さない花宮は急に踵を返した。
本当に突然だったものだから足が絡まる。でも花宮はそんなのお構い無しで部屋を出ていった。


「………」
「………」


しばらく引かれるままにしていた。
花宮は自分たちの控え室には帰ろうとせず、人通りがまったく無い廊下まで俺を連れてきた。


「花宮?」


俺をベンチに座らせて、さっきまでとは違う寂しげな表情で見下ろしている。
可愛いまろ眉がシュンと垂れて何かを訴えてるのかもしれない。


「………名前」
「ん?」


久方ぶりに下の名前で呼ばれた。
花宮は悪態や虚勢なしにして話す時、下の名前を呼ぶ。


「オレじゃダメか?」
「なにが…」
「まだ木吉がいいのか名前」
「ちょっと花み」
「オレはお前のなんだよ!」
「花宮…」


ちょっと落ち着こうよと、花宮の袖を引いて隣に座らせた。


「オレには花宮が一番だよ。信じられない?」


体を少しずらして花宮の方を向く。この、ぶすくれた横顔が可愛いなぁなんて思ってしまう。


「大好きだよ花宮。出会った時からずっと」


頬にかかる髪を耳にかけ、そこにキスを落とした。これをすると花宮は何もできなくなるのだ。





可愛い君にこのアイを
だから機嫌をなおしてよ



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