10万打企画 | ナノ
私のことも見て

ダム、ダムとボールが床を叩く。
その音がいつもより一つ少ないと分かったのは征十郎に声をかけられた時だ。


「青峰を知らないか名前」
『知らないけど』
「そうか……なら、」
『?』


広葉樹が様々な色に変わり始めた9月の第三土曜日。暦の上ではもう秋なのに暑い日々が続く今日この頃、




「悪いが探しに行ってくれないか?」




大輝がすぐいなくなる。














『と、いうわけでえーっと桃井さん、大輝を知らないかな』
「ごめん。ちょっと心当たりないな…」
『だよなぁ……』


いくら幼なじみと言えども、突然いなくなった奴の居場所までは分からないよな。オレだって征十郎の居場所を聞かれてもわからんもん。


「でも行きそうな場所なら知ってるよ」
『マジ?』
「うん。ホント」


案内してあげる。
そういって桃井はオレの手を引いて歩きだした。





『…………』
「…………」


歩くこと数分。何処へ行くかも聞かされぬまま、彼女の仕事をちょこちょこ手伝いながらやっと体育館を出た。
洗濯物はあとを絶たないし飲み物はあっという間に無くなる。タオルだって放って置けば直ぐにびしょ濡れだ。


『桃井、さんて毎日忙しいんだな………ぉふ!』


すれ違った別のマネージャーが持つ洗濯かごを目で追いながらなんとなく呟くと、前方を歩く桃井さんが急に立ち止まった。
よそ見していたオレはその背中に飛び込む。この場に大輝がいたら確実に刻まれてたことだろう。


『ごめん!大丈夫だった桃井さ…』
「──き、よ」
『え?』
「さつきよ名前君!青峰君も赤司君も名前で呼ばれてるのに私だけ名字で…仲間外れはイヤよ!」


そう叫びながら振り向き桃井…さつきは頬を赤らめながら泣きそうな顔をしてた。


『ごめんよ…えっと、さつき……』


彼女の迫力に気圧されて、つい謝ってしまった。


「ふふっ、よろしくね名前君」
『おお』


女の子の考えなんてよくわからない所は有るが…まあ喜んでいるならそれでいいか。


「あ、ついたよ青峰君がいそうな場所」
『へ?ここって…』


第三体育館じゃねーか






私のことも見て
(よー大輝。何してんだ?)
(秘密の特訓だ)
(オレも混ぜろよ)

(男の子はズルい)


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