10万打企画 | ナノ
白紙のページを埋める作業

「コレより作戦Aを始めるのだよ」

「なんの作戦だよ」


夏休み三日前、オレん家のリビングを埋める緑紫青水色…と桃もちゃっかり居る。なんなんだお前ら部屋の温度を何度あげれば気が済むんだ。


「まず教科を分担しようか。オレは理科なのだよ」
「ボクは国語です」
「私社会ー」
「オレは一行日記でもやろうかなー」
「あ、ズルいです紫原くん」
「じゃあ英語やる。答えついてるし」


そんな会話をしながら、彼らはテーブルの上に積み上げられている折り目一つない問題集達を手に取っていく。


「ほら、名前君は数学ね」
「手抜きは許さないのだよ」
「一番めんどいヤツあたったねー」
「まあ頑張ってください」

「…………へ?」


ぽん。と手に置かれたのは分厚い数学の問題集。数学だけは答えがないから解くのに一苦労な上に書く量が半端ないやつ。


「では各々、明日までに」


真太郎の言葉を合図に、彼らは問題集を開き作業に取り掛かった。敦に関しては問題集より先に答えを開いている。
そして大輝だけはソファに深々と腰掛けてテレビを見ている。休日の親父か。


「えっ、ちょっと皆何やってんの」
「見て分かりませんか?」
「青峰の夏課題を手伝っているのだよ」
「早くやらないと終わらないよー?」

「いや、そうじゃなくて…」


なんで当の本人が何もしてないのかって聞いてんだよ。


「奴にやらせるよりずっと効果的なのだよ」
「じゃあ青峰君は一行日記でもやったらどうですか」
「そうだよ青峰君。毎日部活だったって書けば楽勝だよ」

「……ったく、しょーがねーな」


皆に責めよられてやっと重い腰を上げた大輝。いやいや、これみんなお前の宿題なんだけど。


「だいたい、なんでオレらがやんなきゃいけないの?」


まだ三日もあんじゃん。


「始業式までに終わらないと毎日放課後は居残り何ですよ」
「青峰君なら絶対逃げるよね」
「そうすれば、宿題はなかなか終わらないのは目に見えている」
「ていうかほぼ不可能になるよねー題終わるの」


そう言いながら着々とページを減らしていく皆。オレはまだ納得がいかず、手をつけるどころか表紙を開いてさえいない


「だからなんなんだよ」


別にいーじゃん、留年するわけじゃないんだし


「あれ?名字ちんしらないの?」
「なにを」
「夏休みあけ直ぐに大会があるんですよ」
「……そーなの?」


はじめてしったわ。


「っつーか、オレらじゃなくて大輝に努力させたらどうよ。社会とかさ、ほぼ選択式なんだから」

「それができたら苦労してないよ」
「そうそうムッ君の言う通り」
「一行日記ですら三日分で飽きてる青峰君に宿題なんてできると思ってるんですか?」
「わかったらさっさと手を動かすのだよ」


咎められるのはオレばかりでなんか腑に落ちない。オレだってまだちょっと残ってるんだけど夏課題。


「いいからさっさとやれよ」


一行日記をテキトーに終わらせて、まこちゃんの写真集片手にコーヒーを飲む大輝。なんだよ、その「使えねーな」みたいな目付きは。


「………」


何様だよテメー。
この分厚い問題集の角でおもいっきり殴り付けてやりたくなった。



白紙のページを埋める作業







「……もう死にそう」
「名字ちんがんばって。お菓子あげるから」
「…右手が腱鞘炎」
「左手があるだろう」
「……眠い」
「あと20ページやったら寝れますよ」
「………」


もうやだこんな夏休み
(これが中1の夏休み)



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