10万打企画 | ナノ
02

『すみません、通して下さい。』

オレは人込みを掻き分け掻き分け、敦が消えていった方を目指した。それにしてもなんだこの人の多さは。


『敦!何やってんだよ』
「あ、名字ちん」


やっと人の山を抜けてすっきりした場所に出た。そこには敦と探してた先輩とその他大勢…あ、相手方は誠凛って書いてある。


「ちょっとちょっと困るよ急に試合止められちぁあ!!何考えてんだまったく!」
『……すみません』


ピピピとホイッスルが鳴らされる。敦とオレがここに出たことで試合を中断させてしまったらしい。
なんか申し訳ないことしたな


「あと各チームそろいのTシャツ着ることになってるんだけキミないの?」
「ダメですか?」
「ダメってゆうか……」
「あ、ダメ」
『そうなんですよ氷室さん』


それを伝えるためにわざわざ探してたわけだし。まあ結果的に敦がちょっと強引に止めちゃったようだけど


「室ちんウチ確か草試合とか禁止。だから止めたんだ忘れてた」
「そうなのか?」
『残念ながら敦の言うことは珍しく正しいです』
「……まいったな」


隣で敦が「珍しいって何」と袖を引っ張ってくるが面倒だからスルーだ。というかたまたまポケットに入ってあった飴をあげたら機嫌が直った。


「だからほら!いくよー」


敦が氷室さんの背中を押す。
氷室さんはまだ物足りない様子であったが規則は規則。致し方ない。


「ちょっと待てよ!いきなり乱入してそれはねーだろ。ちょっとまざってけよ」
「火神!?」
『うわバカだこいつ』


たった今陽泉はこういうのダメって話をしたばかりなのに…ああ、ほらレフェリーも困ってる。


「それより、そのマユゲどーなってんの?二本?」


敦が、火神という奴の眉毛に触る。あ、一本抜いた


「ってぇー!!何すんだテメェ!!」
「アラ?ごめーん。うわぁ長っっ」
「このっっ…話聞いてたのかよ!?」
「あーそれはやだ。つかれるし」
「は?」


試合なんて興味ないと呟く敦。
そうそう。氷室さん連れて速く監督んとこ戻ろうぜ。


『さ、氷室さんも。オレがカバン持つんでささっと帰りますよ』
「いやちょっと待って」
『え?』


試合はダメだと言ってるのに帰ろうとしない先輩。あ、あなた完全に敦と火神の会話楽しんでるでしょう。


「なーんだガッカリだわまったく。そんなビビリだとは知らなかったぜ。逃げるとかダッセー」
「………」


火神がの小学生も言わないような超低レベルな喧嘩の売り方をした


「はあ?」


帰る気でいた敦が不満げに呟いて振り返る。オレは挑発に乗るんじゃないよと祈るばかりだ。


「逃げてねーしっ」
『(買いよった!)』


あんな挑発で簡単に口車にのっちゃうなんて敦も相当お子ちゃまだった。体は大人、中身は子供ってか?オレの隣にいる先輩は楽しそうにそれを眺めてる。


『先輩、これを狙ってました?』
「まさか。こんなに面白くなるとは思ってなかったよ」
『……呆れた』


悪ふざけが過ぎますよ氷室さん。


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