砂糖水に溶かしたら | ナノ

さあ、抱きしめて





『さくらの木…』


上を見上げれば、青々としたさくらの木。いつの間にこんなに茂っていたんだろ
最近下ばかり見ていたからか。
たまには上を見るのも良いものだな


『…風がきもちい』


木陰に吹き込む風は、新緑のかおりがして心地よかった。



「悠人」



『んー?』

ざわざわと、葉と葉が奏でる音の中、己の名前を呼ぶ声がした。振り返れば頭上の緑よりも深い色をした彼が立っていた


『どうした?』

「いや…この前はすまなかったのだよ」

『いいよ別に。オレも言い過ぎたなって、後になって反省したし』


だから大丈夫だよって、言って緑間に背を向けると木漏れ日の射す木を見上げた


「悠人」

『なに?』


また呼ばれて、横目でちらりと見やる


「いや、やはりいい」

『そう』


でも、緑間は何か言いたげに口をぱくぱく、ぱくぱく。
気になるんだけどなぁ……


『あ、そういや真ちゃんさ、ラッキーアイテムどうした?』


今日はまだ見てないね。と、微笑んだ。自分が上手く笑えてないのはよくわかってる


「今日のラッキーアイテムは…」

『うん?』


真ちゃんは、組んでいた腕を広げた



お前だ、悠人




眼鏡ごしの瞳は真っ直ぐで力強かった。あれは決心した目だ


『なにそれ』


スッゴい恥ずかしいんだけど


「冗談ではないぞ。オレは本気だ」


真ちゃんの声は真っすぐで芯が通ってる


『ホントにオレなんかでいいの?』


最終確認だよ


「かまわん。むしろ一生そばにいてもいいのだよ」

『あっは!なんだよそれ』


そもそもオレ男だし


『後悔しても知らないからな!』


オレはその大きな胸に飛び込んでやった。



大好きだよ真太郎



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