狂詩曲 | ナノ
コレで満足か





合宿中にさつきから付き合ってと言われて早1週間。
噂というものはあっという間に広がる。おかげで俺達が世間一般的にいう「カップル」であるという事はクラス中どころか学年中に広まっている。


「お待たせ瑞樹君。待った?」

『いいや。オレも今バイト終わって来たところ』

「そっか!」


じゃあ帰ろっかと、さつきはオレの前を歩く。
だから、彼女が今どんな顔をしているかは分からない


『楽しいか?さつき』

「……楽しいよ」


さつき声は弱々しかった。
そもそもこれは"付き合ってる"と言うことになるのだろうか。
帰り道はほとんど無言だしさつきは肩を並べてくれない。
昔はもっと話題が絶えなかったのに


『さつき…』


何を言おうとしたわけではないが、なんとなく彼女を呼んだ。



「青峰君…」



なのにさつきの口から出た言葉はオレの名前じゃない。目の前に立っているもう一人の幼なじみ青峰大輝の名。


『よう、大輝』


奴とこうして面と向かうのは久しぶりだった

大輝はオレを見たあと、さつきに視線を移して言った



「さつき」



名前を呼ばれてだけなのに、さつきの肩は大きく動く。オレはその小さくなった肩を抱いてやることもしない



「楽しいか?」



大輝はオレと同じ事を繰り返した。
2人きりなのは楽しいかと聞いている



「楽しく、ないよ…」



顔を覆ったさつきはとうとう泣き崩れてしまった


『さつき…』


しきりに、ごめんなさい許してと嗚咽混じりに謝るさつき


『大丈夫、オレ…全部しってたから』


仲良く話すオレとさつきに嫉妬した大輝のように、さつきもやきもちを焼いていた。

それくらい気付いてた。


『何年一緒にいると思ってんの』


このくらいで嫌いになるわけねぇだろ
オレも、大輝も。

幼なじみなんだから




コレで満足か

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