付き合って
『合宿、ですか…』
「そう!監督に許可もらったから瑞樹君も来てね、絶対よ?」
三日前、玄関で押し倒されながら言われたのがソレだった。
そして現在、男だらけの大浴場の一角で体を小さくして湯槽に浸かっている
「よくあのオヤジが許したな」
『だよなー』
どうせさつきの事だから、オレが来れば大輝もちゃんとやってくれるとかなんとか言って言い包めたに違いない。
『露天風呂って行けねーの?』
風呂場にこんだけ人がごった返しているのだから、露天風呂も使えばいいのだ。
夏だから寒くないし。
「女子共がいんだ」
『は?』
「混浴なんだとよ、ココ」
なんでも、経費削減したら壁代わりの岩があまり大きくなくて、隙間ができてしまったらしい
そこを通ると簡単に女子風呂と男子風呂が行き来できてしまうので仕方なく混浴にしたのだとか。
『オレ、気にしないし』
こんな窮屈な風呂にいるより露天に行きたい。
『……なんだ、結構しっかりしてんじゃん』
混浴だなんていうから、もっとガランと通路ができてるかと思ったが、実際には人ひとりが通れるくらいの隙間しかない。
『きもちいー』
「……その声、もしかして瑞樹君?」
『あ?さつきか?』
岩の向こうから声がした。
「瑞樹君ひとり?」
『そうだけど?』
「そっち行っても良いかな」
『別にかまわねーよ』
大浴場と露天を隔てる窓はすりガラスだから室内にいる男共には外の様子は見えない。
「えへへ…やったぁ」
さつきはザバザバとお湯の中を進んで来た
『タオルぐらいもってこいよ』
「今更でしょ」
『たしかに』
どこまで来るんだと見ていたら、オレの隣に座った。
「この前、先に帰ったでしょう。青峰君と」
ぷう。と、さつきは頬を膨らませる。
『くすぐったいから人の胸で指たててうじうじするの止めてくんない?』
「怒ってるんだからね」
『おいおい…』
さつきはオレの膝に乗ってきた。
だからタオルぐらい付けろといったのに…オレは男だよ?
「ずるいよ、大ちゃんばっかり」
『は?』
首に回してくる手が、耳をいじってくる。
「あたしと一緒に居るのが嫌なの?」
『そんなことねぇよ』
「なら………」
付き合って
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