狂詩曲 | ナノ
どうしたらいいの





「けぇるぞ、瑞樹」


大輝はぺしゃんこのカバンを持って教室を出た。


『部活はいいのかよ』


後さつきに黙って帰っていいのかよ


「いいんだよ」

『良かねぇだろ』


この前オレが1人で帰ったら、3日ぐらい口聞いてくれなかった。
なのに帰りは3人じゃないと嫌だって言うもんだから居心地が悪いったらありゃしない


「何でアイツに決定権があんだ」


甘やかしすぎなんだよと大輝は言う


『………わかった』


今日はお前と2人で帰ることにする




 ***




『うっわ、お前んち寒っ!』


さすがオール電化の新築。
外は焼けるように暑いのに、家の中は澄んだ冷気がいっぱいだった。


「なんか飲むか?」

『コーヒー』

「また…だから背ェ伸びねんだよ」

『うっせ』


大輝はキッチンに、オレは奴の部屋に行った。




『相変わらず汚ねー部屋』


未洗濯の服こそないけれど、雑誌やマンガ、おばさんが丁寧に畳んでくれたであろう洗濯物が散乱していた。


『まさか、片付けさせるために呼んだんじゃねーだろーな』

「いや、そのまさかだよ」

『だいき…』


マグカップとカルピスの入ったコップを持って入ってきた。
ドヤ顔で人を使うなよ。
オレは主婦じゃねぇんだよ


『でも片付けの前に飲み物』

「ブラックで良かったよな」

『ああ』


部屋の中央にある丸テーブルに肘をついてカップを受け取る。
大輝もオレのすぐ隣に座った。
息遣いが聞こえてきそうだ


『うま……』


ほろ苦い味と香が口いっぱいに広がる。
コーヒーは、何も入れないのが一番


「そんなに旨いもん?」

『ご飯と一緒でもいける』

「ねえだろ」

『うん。ちょっと言い過ぎた』


そしてまた、温かいうちに口に含む


「オレにも一口」

『あんたコーヒーは……んっ』


大輝の唇は、カップではなくオレのソレに重なった


『ん、ふっ……』


舌はコーヒーの残り香を求めて奥へ奥へと侵入してくる。

さ、酸欠………


『ふっ、く……はっ!』


息が苦しくなって、大輝を押し倒した。


『なにすんだよ』

「ん、嫉妬」

『は?』


大輝は口直しのためにカルピスを飲み干した


「オレと2人の時も"さつき、さつき"って」


オレだけを見てほしいのに。と大輝は目で訴えてくる。


『そんなとこ言ったって……』


3人居ないと寂しいだろ?




どうしたらいいの

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