狂詩曲 | ナノ
踏み出した一歩





言うんだ、今日こそ


タイミングが掴めなくてずっと言えずじまいだったけど、今度こそ言えるきがする。
だって今日は誠凜との二度目の公式試合。

きっと落ち込んで帰宅するであろう大輝とさつき

そんな彼らに笑顔で言うんだ。



また3人でバスケしよう




きっと2人とも笑顔で喜んでくれる。




 ***




「ただいま」
「ただいまー」


『お、おかえりー』


うちのリビングでコーヒーを飲んでいると、いつものように大輝とさつきは自分の家であるかのように靴を脱ぐ。


『お疲れ様2人とも。さ、疲れただろ?こっちに座れよ』


いつものように温かいココアを準備して、テーブルに座るよう勧める


『どうした?』


しかし彼らはドアの近くに立ったまま、荷物もおろさず立ち尽くす。
2人の表情からは何を思っているのか想像できないけど、その目はほんのり赤くなってるようにも見えた


「瑞樹…」

『なんだ?大輝』

「試合…」


その続きが、なかなか言葉になって出てこない。
開きかけた口は閉じたり開いたり。


「しあい、ね…」


しまいにはさつきが泣き出してしまった


『だから、どうしたって言うんだ。泣いてたら分からないだろ』


さつきに近寄って、頬を伝う涙を拭ってやる。


『オレ、ちゃんと聞いてやるから…話してみろ?』


何を言っても驚かないから。と、大輝に目を向けた




「負けたよ、試合…」





そう言った大輝の顔は、悔しさよりも喜びに満ちていた。


『そうか』


よかったねと、本来なら場違いな言葉が口からでた。


『満足したか?』

「ああ。欲しいもんは手に入った」


大輝の欲しかったもん、それは"勝つか負けるか分からないギリギリのクロスゲーム"


『じゃあさ、今度はオレの番だよな』


さつきは新しい恋を見つけた。
大輝は願い事が叶った。



なら、オレは?



今まで嫌々2人に付き合ってたわけじゃない。
よかれと思い、あえてバスケから離れて生活してた。
けど、それももう必要なさそう。



『オレにもやりたい事があるんだ』



一字一句、噛み締めるように言葉を紡ぐ。2人を見据えて、ゆっくりと…
オレは覚悟を決める





『3人でバスケしよう』






そしてリベンジしようよ。




踏み出した一歩

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