狂詩曲 | ナノ
オレはバスケがしたい




キュッ、キュ、


体育館に二足分のスキール音が響く。
その音が心地よい


「やっぱり上手いのぉ!なんでバスケ部入らんかったんや」

『オレ、勝負事って嫌いなんすよっ!』


5分はとっくに過ぎてるけど、オレらは止まらない。


「の、わりには楽しそうやけど?」

『だってこれは勝ち負け関係、無いじゃ、ないですかっ!』


今吉さんの放ったボールが弧を描く。
カットできなかった



 シュッ…



ボールはきれいにリングをくぐった


「バスケ部に入らん理由は、青峰と桃井がいるから」


あんなに動いた後だというのに、この人は涼しい顔をしてる


「自分がまたバスケを始めたら、"バランスが崩れる"とでも思ってるんやろ」


実に的を得た言葉で、ムカつく


『なんでそんな事言えるんすか』

「ワシの得意」

『?』

「相手の動きを予測するのも得意やけど、心ん見抜くんも得意なんや」

『…いい趣味してますね』

「誉め言葉として受け取っとくわ」


本当は嫌味なんだけど。
分かっててそう答える今吉さんとは馬が合いそうにない




「……なあ藍川」

『あ?』

「バスケ部に」
『お断りします』


バスケ部に入れというだろ?
誰が入るか。

レギュラーになるための争いやいざこざなんかに巻き込まれたくない。


『言ったでしょ。オレ、勝負事は嫌いなんす』

「それは、"青峰と"やろ?」

『……』


また、この糸目はどうして人の心を読むのだろうか。


『ガキのころから一緒ですからね。そんなアイツと勝ち負けで競争なんてしたくない』

「それもウソ」

『嘘じゃな………』


オレの次の言葉は、今吉さんに手で制された。





「もっと素直になりぃ」





それだけいって、彼は帰っていった。
ホント、あの人だけは好きになれないわ



『言われなくてもわかってる』



自分の気持ちくらい、わかってるよ




オレはバスケがしたい

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