オセロゲーム Part3 | ナノ
認めてやるよ、仕方ねぇ (1/3)



両者ルーキーの攻防が激しかった前半戦は息が詰まるようだった。本当の敵同士になったキセキの世代の逸脱したプレイはまさに圧巻。あそこにいるプレイヤーじゃなくとも手に汗握る。動いてないのに喉も渇いた。ああ飲み物……


「ふへ──!!ノド渇いた!!」

「なんだよコガ、いきなり」

『おっきなため息っすねぇ』


でも丁度オレが思ってたことと同じだ。思ってたけど、先輩達がいるところで堂々と言うことはできないので代わりに小金井先輩が言ってくれて自分もスッキリ。


「だってなんかキンチョー感すげーしさー。オレらすげー奴らとやってたんだなーみたいな」

「ほぼマグレ勝ちと惨敗だけどな」

「にしても会場のこの熱気……確かに飲み物欲しいわね」


カントクも熱さから少しでもしのごうと襟を緩めて、手で扇ぎ風を送る。
ああ先輩のスレンダーで白い肌が…と不覚にも思ってしまったのは内緒だ。殺されるから。


「……なんか買ってきましょうか?」

「じゃオレポカリ!」

「オレも」

「え?」

「コーラー」

「なっちゃんレモンね!」

「ビール!」

「誰だいつも酒頼むバカは!やめろ!!てかもう一年全員買い出し!」

『えー』


次から次へと飲み物のリクエストが来る。それらをまとめるのが面倒になった日向先輩は一年をパシリに使った。
小声で不満を漏らすオレらは「うるせぇ!」と日向先輩に一言で一掃させられたので、おとなしく席をたった。


「は〜めんどくせー…」


これだから日本の縦社会は。と、ぼやく火神を隣に自販機まで歩く。後ろでは頼まれたジュースの種類と本数を忘れないように指を折り数える3人がいた。

ほどなく歩くと、100円均一の缶が並んだ自販機にたどり着いた。


『えーと、お茶みっつとコーラと……』

「あとなっちゃんレモン」

『おう、それそれ』


ピッ、ピッ、とボタンを押していく。そのたびに回るルーレット。7を三つ揃えるともう一本もらえるらしいが残念ながら全く当たらない。二つ目までは当たり前のように揃うのだが三つ目がいつもハズレる。というか当てる気ないだろこの自販機。


『なあ、テツお前もやってみろよ。絶対当たんないぜこの自販機………あれ?』


右を見る…火神が隣の自販機で飲み物買ってる。左を見る…壁。後ろを振り替える…河原達が缶を抱えて待ってる。


「どうした藤井?」

『ああうん、あのさぁ火神』


テツヤが居ないんだけど。


「…………」


火神や河原達がぐるりと辺りを見回した。そして呼吸三つほどの間オレを見る。
だんだん彼らの顔つきが変わっていく。何か重大な発表を聞いたら時のような真に迫った表情に。


「本当だ!」
「いねぇ!迷子!?」
「いったいいつから…」
『さあ』


抜け駆けは許さねぇ!などと騒ぐ福田達。そもそもテツヤがミスディレクション使ってちゃっかりサボるのなんて日常茶飯事だろう。なにを今さら。


『でも、一応探しに行ったほうがいいか』


もしかしたらガチで迷子になってるのかも知れないし。
オレは飲み物を全部火神に預け、テツヤを探しにでた。




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