やることは決まった (1/3)
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フッフッ、ハッハッ、吸って吸って、吐いて吐いて。長距離走るときはこれが良いと昔習った。でも何度やっても自分にはあわなくて今では滅多にやらない呼吸法。
隣で走ってるテツヤのスピードはそれほど速くないから、たまにはこのやり方で走って見ることにする。やはり辛い。
『ところでテツヤ』
「なんですか、藤井君」
『オレらなんで走ってるの?』
「火神君に追い付くためですよ」
『……ああ』
真太郎が去ったあと、一人苛立ったまま砂浜へ走りに行った火神の姿を思い出す。背の低い垣根に隠れていたテツヤの存在にも気付かず行ってしまったのを見ると、本当に余裕が無かったようだった。
『それでお前突然「走りましょう」なんて言ったのか』
「ええ、そうです」
暫くこうして無駄話をしながら走って行くと、ようやく火神追い付けた。
「ミスディレクションで火神君の隣に行きたいと思うので藤井君も合わせてください」
『努力しよう』
テツヤに習って気配を殺してオレは火神の右、テツヤは左に並走するようにした。
「火神君、ちょっと速いです」
『また膝痛めるよただでさえ足場悪いんだから』
「んがっ!?」
いつの間にか一緒になって走っていたオレらに気づいた火神はそれはもう驚いた。
「なんでいきなり並走してんだよ!?お前等!」
「ちょっと火神君を励まそうかと」
「!?見てたのか黒子テメェ!タチ悪!余計なお世話だっつんだよバカ」
「!」
「負けた理由なんざ、とっくに分かってる」
『あら分かってたのか』
バカガミのコトだからてっきり真太郎に負かされた腹いせに走ってるのかと。
『まあ、カントクと真太郎にアレだけたくさんヒントを貰ったのに何一つ気付けないってのも重症だけどな』
よかったな火神、お前の頭はまだ使えるらしい。ケラケラと笑ってやると鬱陶しそうに睨んで来た。おー怖い。
『で、何が分かったんだい火神?』
答え合わせをしてやろうか。
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