本質を探る (1/3)
ビ────ッ
「試合終了──!!85対91で秀徳の勝ち!」
「「「「あっしたァ」」」」
誠凛と秀徳の合同練習。
その中で行う練習試合では、3試合とも誠凛は勝てなかった。
「合宿中3試合やって3勝か、ふーむ……んー」
「やっぱアレじゃないっすかー?予選の時はマグレ的な」
「…………」
ケラケラと笑う高尾とは対照的に、緑間は特に何も言わなかった。
「負けた理由をマグレで片づけるのは感心せんなー。高尾、走ってこい。外10周ぐらい」
「ぎゃすっ!?」
「それに、やったお前らが一番分かってるはずだ。誠凛に負けた予選の時より、勝った今回の3試合の方が手強かった」
前回よりも強くなっている。それは監督に言われずとも秀徳の面々は気付いていた。
「(しかも、木吉と火神抜きでこの強さ……このままいくと冬は心してかからねばならんな)」
中谷監督は軽めの調整をしている木吉へと目をやり、次いで藤井へ視線を向けた。
「……緑間」
「なんですか監督」
「お前の行ったとおり、藤井直也という男には"まだ何かある"」
「ええ」
3試合とも藤井は出ていたがこの3試合目が一番手ごわかった。と、中谷監督は睨んだ。
「(パスの正確さといいヘルプのタイミングといい)」
今はまだ不完全で穴がちらほら見受けられるが、この夏に仕上げて技のクリオティがあがれば…
「"元キセキの世代"の本領発揮と言うことか」
「…いえ監督、藤井は、」
「なんだ?」
「……なんでもありません」
彼は"キセキの世代"と言い切るのは少し語弊がある。だがそれを今言ったところで話がややこしくなるだけだと思い、緑間は口を閉じた。
「はいっ、しっかり冷やすのよ!」
ドン!と置かれたのは氷水がなみなみと注がれる青いポリバケツ。カントク流のアイシングらしい。筋肉痛・疲労蓄積の軽減の効果がある。
「けど結局……試合は全敗か〜。オレらまさか下手になってる?」
「そんなことねーさ。成長してるぜ、確実に……自信持てよ!オレ達は強いぜ!」
『そ、そうですね』
ガッツポーズで自分達の実力を実感する鉄平さん。足元のポリバケツがすごく残念だ。
なぜこの人はここまで決まらないのだろうか
「あ、それと藤井君今日の動きなかなかよかったわよ!」
『ありがとうございます…』
親指をグッと立てて笑うカントク。
オレもつられて口元が緩んだ
「よかったな藤井」
それでいいんだよ。と主将も笑った。
『(みんな、嬉しそうだ)』
そうか。これでいいんだ。
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