ちょっとずつ (4/4)
『……おお』
砂浜での練習の次は、体育館で通常練習。普段特に気にしてなかったが、改めてバッシュの高機能さを実感。
『砂浜すげぇな』
今なら倍速で動ける気がする!って、誰かが叫んでたけどそーいう感覚はオレにもあった。
ぶっちゃけ気のせいだが。
───キュッ
柔らかな地面でできなかったドライブをする。いつもより数段動きやすかった。
『(なんだろ…足がもたつかない)』
たった1日やっただけでコレほどの実感があるのだ。
海合宿中ずっと繰り返しているだけでも十分効果が得られるだろう。
────バッ
ボールを持った火神君は性懲りもなくまたダンクしにいく…
『あ?』
…かと思いきや、普通にレイアップでシュートした。
「火神、今のはダンクいけよフツーに!」
「タイミング合わなかったのか?」
『大丈夫かー?』
「…………」
心配してかけられた声に火神君は何も答えず、ひとりで考えてるようだった。
***
「ストレッチは入念にやっとけよ、明日に響くぞ」
「「「ウィース」」」
(地獄の)練習を無事に終え民宿に戻り、1年にと割り当てられた部屋でストレッチを始めた。
『イタッ、いた、あたた…』
オレは河原君に背中を押してもらう。
「わりっ、痛かったか?」
『あー大丈夫。むしろもっとやってくれ』
「そうか」
すると河原君は容赦なく背中に体重を掛け始めた。いや、いくらなんでも手加減というやつは欲しい。
「そういえば今日の藤井ってパスが多かったな」
『そりゃ砂浜だから当たり前じゃ』
「いや体育館でだよ。口にはしてないけど先輩達も感じてたと思うぞ」
『オレはいつも通りのつもりだけど』
なんだろ。
面と向かって自分のやってきたバスケについて言われると急に意識しちゃう
「だってほら、藤井って最初の頃はパスしてるとこなんて全然見たことなかったから」
『あー…そうだっけ?』
「うん。なんかひとりで楽しんでるみたいだった」
『ひとりで』
その言葉が引っ掛かった。
オレの望むバスケは本当はそんなんじゃないんだが。
「ああ、悩むなよ。今の藤井に変なとこはないんだから」
『そうか?なら…いいか』
人間、趣味やクセなんて人生でいくらでも変わる。
バスケスタイルもまたしかり。
『そんなことより、オレは明日の朝メシのことで頭がいっぱいだ』
「……頑張って起きろよ」
『おう』
そんで、カントクより先に台所の主導権を握らねば。
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