オセロゲーム Part3 | ナノ
どうなるんスかね (3/4)




『おいおい抜けねぇじゃねえか』


ドリブルのテクニックに定評がある笠松さんが何度も仕掛けるのだが、腹黒眼鏡はそれにピッタリくっついて回る。おそらくそれができるのは、さつきの集めるデータのお陰でもあるだろう。
だが笠松さんは今吉の隙のないディフェンスも気にせず打った。


『たしかに、それなら読み合いなんて関係ねーな』


ガコン!
やや無理やり放たれたシュートは予想通りリングに弾かれる。惜しい、と落胆する声がどこからともなく聞こえてくるのだが、笠松さんの狙いは自分で決めるコトではない。
外れたボールを奪うのに、データも読み合いも不要だ。笠松さんはソコに賭けたのだ。


『または信頼とも言うか』


早川さんは力ずくで落ちてくるボールを奪取した。あの若松さんからリバウンドとるんだから、もう気合いだよね。
森山さんの変なフォームから放たれたボールはリングに入った。


「決まった!海常12点差に戻すー!!」


キセキの世代抜きでやれば、強いのは桐皇だ。それはコートにいる彼らも分かってる。それでも海常は必死に食らい付いて放さない。

ボールは次に桐皇のクイックシューターに渡る。ノーマーク。完全に虚をつかれたかたちになるのだが、ここでやすやすと得点を許すわけにはいかない海常。決められたら15点差。
残り時間を考えるとどうにかして防がなければいけないという場面で、森山さんが動いた。精一杯伸ばした手がボールの軌道を少しだけずらす。ガコン。ボールは笠松さんの手の中に落ちた。


『いいねぇ楽しい試合だ』


見てるこっちも、思わず体が動いてしまいそうだよ。
ねえ福田君もそう思うだろう?と、隣の脇腹をこづいた。福田君は顔の筋肉を引きつらせてこっちを向いた。


「いいや。むしろハラハラしてしょうがねえよ。お前の感覚が変だ」

『そうか?』

「だっていくら黄瀬だって青峰のコピーは難しいって。それなのにやろうなんて、無茶だぜ」


いつ崩れてもおかしくないこのギリギリの均衡。一瞬でも気を許せばガラガラと崩れてしまう穴の空いたジェンガのように、そのバランスが壊れてしまうのが怖いのだろう。福田は。


『涼太ならできるよ』

「できないって」

『余裕だって』

「これだからキセキの世代ってやつは…」


感覚が変だぜ。と福田君がため息を吐いた。そんなこと言うもんじゃないよ福田君。
ほら、見てみろよコートを。


『アイツはやるようだよ?』


一層、空気が変わったコートでは黄瀬と大輝が対峙していた。
ぞくり。観客席に居るオレでさえ、鳥肌が立ってしまった。なんつー黄瀬の集中力。まったく待ちくたびれたよ。




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