どうなるんスかね (2/4)
やっぱりどこか虚ろな黄瀬はゴールから離れた所で大きく跳躍した。
『……あれは』
誠凛戦の時もやってたホームレスシュート。片手でぶん投げるように放つ乱暴なアレ。
防げるとでも思ったのだろうか。若松が反応してジャンプしたが、逆にチャンスを与えてしまった。
「プッシング、黒6番!!」
ピーッとホイッスルが鳴らされ、選手達の足が一旦止まった。
「フリースロー、ツーショット!!」
フリースローラインに立った黄瀬は審判からボールを受け取る。ダム、とボールをつき狙いを定める。
一投目。これは吸い込まれるようにリンクを通った。
「すっ……すげぇえ黄瀬……!てゆーかカンペキ青峰みてーじゃん!!」
観客席でその一部始終を見ていた小金井先輩が興奮した様子で言った。
「……いえ、たぶんまだ不完全よ」
「え!?」
「その証拠に速攻とかで青峰君以外がマークに来た時しかやってない。きっと本人の中でまだイメージとズレがあるのよ」
『……たしかに。大輝ならあのファウル貰ってもシュートは外さない』
カントクの言う通り、黄瀬は大輝とやり合うだけの模倣はまだできていないのだろう。だから大輝以外の選手で、イメージのブレを修正しながら本物に近付けているのだ。
「つまり……黄瀬が青峰に再び一対一を仕掛けた時が、模倣完成した時だ」
『……』
鉄平さんの言葉を聞きながら、二投目を放つ黄瀬を見た。
これも入る。タイマーが再びカウントをはじめた。第3Qもあと5分とちょっと。
「2本目も決めたー!!海常もねばるぞ!!」
海常のじわじわくる追い上げでワッと場内沸く。しかしリスタートは桐皇からだった。波に乗りたい海常には不利だ。
『……なっ!』
ガンッ!!と、ゴールが鳴った。
大輝のもとへ渡ったボールはこっちにまで聞こえるド派手な音を立ててリンクを通り抜けたのだ。投げた本人、左手を腰に当てて仁王立ち。おおよそシュートした人のとる体勢ではない。
あんなのでたらめだ。フォームなんてありっこない。オレも、いつか大輝のようにどんな体勢でも打てるようになりたいと思っているが、アレはちょっと無理がある。
『あんなん、ありえねぇよ』
「う……うわああ、決まった!?つかシュートだったのか今の!?」
「メチャクチャだアイツ!!」
46対60…14点差というのは、黄瀬のコピーが完成するまでにどうにかして追い付きたい海常にとっては大きな痛手だ。
『15てん……』
おそらくこれがデッドライン。大輝はバスケバカだけどそれくらいは考えてるのだろう。だから、わざとあり得ない体勢で打った。タラタラと黄瀬のコピーに付き合う筋合いはねぇぞ、ってか。
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