探り合いから始まる (1/2)
「それでは準々決勝第二試合、海常高校対桐皇学園高校の試合を始めます」
オレたち誠凛が観覧席に座るとちょうど試合が始まった。
桐皇の今吉さんとかたい握手を交わす笠松さんを見て思い出したけど、そういえば借りっぱなしのシャツがタンスの中にしまってあったっけ。
「海常ボールからだ!」
隣の席にいる降旗君がコートを指差して声を張った。
まず笠松さんから黄瀬にボールが行く。立ちはだかる大輝をうまく交わしたがスティールでボールを弾かれた。転がるボールは桐皇側に渡り、あの謝りキノコがスリーの先制点を入れた。
海常のうるさい人がリバウンドを取りに行ったが努力むなしく。
「あれ?また黄瀬だ…」
『ああ、さっき止められたばかりなのにな』
降旗君が疑問に思うのも無理はない。いくら黄瀬でも、大輝が目の前にいるのに立て続けに勝負仕掛けるのは正直自殺行為だ。流れを持っていかれるかもしれないのに…
『…あれは桜井のクイック』
ついさっき見せられた桜井のクイックリリース。ナマで一度見ただけなのにまんまコピーできるとは「キセキの世代」の肩書きは伊達じゃないと分かるが、残念だが相手は大輝だ。"普通の技"をコピーしてもアイツは突破できない。
ガッ!
後出しで飛んだ大輝の指先に触れたボールは惜しくもリングの縁に当たって跳ね返る。それは今吉さんの手に渡った。
『これで流れは桐お……!』
しかし流れはそう簡単には切り替わらなかった。笠松さんは桐皇の糸目からボールを奪いスリーを決めた。さすが全国区のキャプテンといったところか…立て直して流れをぶった切ってしまった。フォローぐらいしてやんよってか、頼もしいキャプテンだ。
「海常もスティール!」
「笠松ってキャプテンもやるなぁ」
「なっ」
となりで河原、福田、降旗がワクワクと会話を弾ませる。いいよなお前らは、そうやって楽しくバスケを見てられてよ。
『あ、ボールが大輝に…』
黄瀬だってバカじゃない。ディフェンスも手抜かりなくやってる。あれはいいディフェンスだ。よく集中していてフェイクも見破ってる。
ダムッ!
大輝が動いた。パスのフェイクを入れてロールのような動きをする。そこから黄瀬を抜こうとしたが防がれた。速さでは勝てないんだから読んで、読んで、読んで、大輝の前に立ちふさがった。昔の経験とカンと、あとは反射神経と。
『それでも大輝の方が一枚上手』
「ん、何か言ったか藤井」
『いや何も。たいしたことじゃないさ降旗君』
そう、オレにとっては別段気になるコトではないただの既成事実だ。
だから今、黄瀬が大輝のフォームレスシュートを弾いたからって特に驚くところじゃない。
まだ、ね……
二人とも本気だしてないから。
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