ちょっとずつ (2/4)
あのサングラスの奥に潜む血走った眼に睨まれた。
すっげぇ形相だったのだが、オレが何したってんだ。
「あいかわらずこえぇ〜…」
『寒気がしました』
蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちだったんだね。
「ほら、タラタラしない!行くわよー」
『はーい』
鞄を持って、クーラーボックスを担いで体育館へと移動し始める。
「どこ行くのよ?」
「え、いや…体育館」
「体育館借りるのもタダじゃないのよ。夕方から!」
「じゃあ昼は?」
「海よ!!」
『泳ぐの!?』
「んなわけないでしょバカ」
というわけで、体育館ではなく海へと連れていかれた。
***
『!?』
海に到着すると、そこにはバスケのゴールが置かれていて、紐で線が引かれていた。
「カントク……まさかここで」
「そ、バスケするの」
けろっとカントクは言った。
どうせなら泳ぎたかった
「前にも言ったけど、この合宿の目的は弱点克服よ」
「弱点?」
「今誠凛に必要なもの…それは選手一人一人の個人能力の向上よ」
『なるほど』
地区予選での敗退はひとえに個人の技量の問題だった。
今回の目標を立てた理由はそれの反省から出たのだろう。
「けどカン違いしないでね。チーム力の向上がかけ算だとしても、5人の数値が低ければ大きな数値にはならないわ。個人技を主体としたチームにするわけじゃなく、あくまで束ねる力、一つ一つを大きくすることよ。誠凛というチーム一丸で勝つために」
チーム一丸でバスケをすると決めたならば、これは避けては通れない試練だ。
「そしてシュート・パス・ドリブル……一つ一つの動作の質を向上させるために、まず大切なのは土台となる足腰よ。そのための砂浜練習。まずはここでいつものメニューの、3倍よ!」
カントクは上に着ていたセーラー服を脱いだ。
タンクトップだけになってすごく涼しそう
『(ただ、もうちょっと露出があってもよかったのに)』
「……なにか言ったかしら藤井君?」
『いいえー何もー…』
まさか口に出してた?
そんなまさかまさか。
「さあ、始めるわよ、(地獄の)合宿!!」
ピッ!とホイッスルが鳴らされる。今この人地獄のって言ったよ…
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