オセロゲーム Part3 | ナノ
‐Tip off‐ (3/4)





ビーッとブザーが鳴る。
なぜ鳴らされたかというと原因はついさっきコートに入ってきたばかりの生意気黄瀬君のせい。だからボールを寄越せと言ったのに、変な意地を張ったおかげで奴らはどんどんでかい顔をしだす。


「オフェンスチャージング」


ちょっと接触したくらいじゃ駒木は全然ファール貰ってなかったのに、黄瀬の時だけやけに厳しかった。まあ自分でなんとかできると過信してボールを手放さなかった黄瀬君が悪いだがな。それでもとばっちり食らって怒られるのはオレたちなんだから、そこんとこ分かって貰いたい。


『……もーいいや』


黄瀬君が入って状況が良くなったワケじゃないし。まあちょっと期待してた部分もあったけどやっぱり期待するだけ無駄なら、テツヤが来るまでオレは一人でコツコツやるだけさ。

結局、61対75となかなか点差が縮まらないままだったけど。




「帝光選手交代です」


ここで黄瀬君に続き、やっとテツヤがコートの中へと入った。やっぱり予想してたとおり駒木の反応は性格の悪さが滲み出ている。


「え!?」

「交代ってドコ……アレ!?」

「またずいぶんショボいの出てきたぞオイ。バスケなんてできんのかー?ケガすんなよ!」


テツヤの凄さを知らない奴らさ好き勝手にいいたい放題。それを真顔で受け流せるテツヤのメンタルに感服です。


『で、今日はどうするテツヤ』


オレが光か、それとも黄瀬君か。


「そうですね…直也君とやれば逆転は容易でしょうが、赤司君から今日は黄瀬君と組むように仰せ使ってるので」

『……そうか』


奴の命令とあらば逆らうワケにはいくまい。黄瀬君のアシスタントはなんかムカつくからテツヤのアシスタントをしよう。


「すみません、力を貸してください」

「いや……オレ!?逆じゃねんスか!?」

「ボクは影だ。点を獲る光は黄瀬君です」


テツヤが黄瀬君に自分の役目を教えた。しかし黄瀬君はピンと来ないようで、DFにマークすらされてないテツヤを探るように視線をおくっていた。いちいちリアクションが面白いな彼は。


『どーれ…』


そろそろアクションを起こしてやんないと、黄瀬君がイライラしてまたファールをもらっちゃうよ。


「……っ」


1人ポツーンと佇むテツヤにボールを投げた。テツヤはそれを黄瀬君へと回す。それは真っ直ぐ飛んで目的の手の中へ。


「なっ……」

「えっ……」


突然現れたボールに誰もが驚いた。おそらくそれがテツヤから来たものだという事実に気付いてるのはボールを受け取った黄瀬君ぐらい。


「なっ……なぁ!?」

「なにが起こった今…!?」


この一瞬に何が起こったのかわからない人達が一気に騒ぎ始めた。まさかカゲのうすさを利用してパスの中継役になっているなんて、頭の弱い駒木に理解できるだろうか。



「ボールから目を離さないでください。点差が点差なんで、本気でいきます」



いい目だ。と、試合中ながら思わず感心してしまった。指で弾けば飛んでいってしまいそうなぐらい弱々しかったテツヤが、こんな強気発言をできるようになったなんて。

自分が一軍から抜けてまだ数週間しか経っていないのに、皆、ずいぶんと変わってしまったようだ。




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