昔の仲間と (2/2)
数分程遅れてやってきたバスに乗り込んで、オレたちは準々決勝が行われる体育館へ向かう。それにしても、これだけ男子が集まるとバスが異様に狭く感じる。
「会場までどんくらい?」
「バスで20分ぐらいだと」
『結構かかるな…』
なれないバスの所為か、膝が少し気になった。秀徳戦の時苦しめられた成長痛はもう治まってるはずなのに。
「直也君ココ座りますか?」
『おお、わりぃ』
テツヤの隣を譲ってもらい座った。いや、それにしても狭いな。
「つーか、こーゆーのは最初に言ってよカントク」
「言ってたら合宿中、気が散るからよ!けど見る価値大でしょ、海常対桐皇学園。「キセキの世代」擁するチーム同士の試合だからね」
カントクは本当に楽しみにしているようだ。バスが出発してからまだ二、三回程しかバス停に止まってないのに携帯を開けたり閉じたり…
『あ。テツヤ、あれは火神君に言ったのか?』
「………忘れてました」
『今のうち言っとけ』
テツヤは「そうですね」と言って、上手く体を捻らせて後ろを向いた。
「火神君」
「……っ、なんだよ!?」
ぼんやり外を眺めていた火神君は、突然テツヤに話しかけられてビクリと体を震わせた。
「出発する直前、緑間君に伝言をもらいました」
「……は?」
そう。
火神のスキルアップのため助言をくれた真太郎に、テツヤとオレがお礼しに行った時に頼まれた言伝。
「"バカすぎて懲らしめただけなのだよ"」
跳ぶだけならノミでもできる。と真太郎は嫌味ったらしく言ってたっけ。
「ほーあのヤロ……」
『落ち着け火神君…』
まだ話は続いてるんだから。
「あと、オレが倒すまで負けるな。だそうです」
「ハッ、負けるかよバーカつっとけ!」
機嫌を損ねた火神も、真太郎からの挑戦状には笑わずにはいられなかった。真太郎がリベンジとはね。黄瀬だけじゃなく、あの頑固者まで変えてしまうとは。この男はまったく末恐ろしい。
***
「すっげー!!これがインターハイ!!」
初めて見る会場に、バスケを始めてまだ2年の小金井先輩はやや興奮気味。他の選手から注目を浴びて若干恥ずかしかった。
「カントク、お目当ての試合は?」
「この試合のアト……ちょうどもうすぐよ。あと15分ぐらいね」
「黒子、藤井……どっちが勝つと思う?」
『え?そりゃあ……うーん』
単純な考えれば大輝なんだろうけどね、黄瀬も決して弱くは無いし……
「黒子はどうだ?」
「わかりません……「キセキの世代」のスタメン同士が戦うのは初めてです。ただ、黄瀬君は青峰君に憧れてバスケを始めました」
「!」
『憧れ…』
確か、バスケをやってる大輝を見て入部したとか。
「そしてよく二人で一対一をしてました……が、黄瀬君が勝ったことは一度もありません」
『そうか、無いのか』
別に勝ち負けを気にしてるわけではないが、今日もまた負けられない大輝にちょっとだけ同情した。でも、まあ…大輝が楽しいと感じる事ができるなら、勝ち負けはどうでもいいのか。
prev|back|next