それは未だ謎のまま (5/5)
「誠凛に勝ったね青峰君」
今の気分はどう?なんてわざとらしく聞いてみた。青峰君の暗い顔を見れば答えなんて一目瞭然だが、少し意地悪をしてみたくなった。
「ねえどうなのよ」
学校の屋上でいつものように昼寝をしている青峰君に詰め寄った。ウザいと言われそうだがその口から聞くまでは諦めないつもりだ。
「やっぱりいつもと同じ、だったかな……」
本当は別の言葉が欲しかった。でもやっぱり青峰君は、ああ、と一言しか喋らなかった。
「直也は…まあまあだったな」
「藤井君が?」
青峰君の口から意外な言葉が出た。たしか藤井直也といえば青峰君やミドリンと同じように「キセキの世代」呼ばれていた頃もある実力者。
「の、はずなんだけど…」
あの時見た藤井君は、"上手い人"よりひとつ上をいく程。火神君より手練ではあったけどそれでも青峰君と勝負になるかはちょっと難しいのではないかと見受けられた。
「まあな」
「二年のブランクってこと?」
「それもあるだろうけど」
「けど?」
なんだろう。
さっきから青峰君は藤井君の話をするのに言葉を選んでる。普段は無神経に言いたいことを言いまくる彼には珍しいことだ。
二軍に落ちたくらいで退部しちゃうような弱虫だなぁと思ってたけど、青峰君は違うみたい。
「アイツはもともと1on1は得意な方じゃなかったからな」
「どういうこと?」
すると青峰君は、藤井君についていろいろと話してくれた。
彼は、私と同じように相手のクセやスタイルやパターンを読み取るのが得意らしい。しかも試合中に。
そしてそれを攻防、シュートに生かす。
「ま、藤井がレギュラーのままだったら…もしかしたらダブルPGなんて呼ばれてたかもしれないぜ」
「PGって、赤司君と?」
「多分の話だよ」
それでも十分凄いと思う。
ではなぜ藤井君は二軍になんて飛ばされてしまったのだろうか。私の記憶では、赤司君と藤井君の仲は良好だったはず。
「赤司の考えることなんておそらく誰も分かんねえよ」
分かるとしたら緑間くらいだ。と言うと青峰君は寝返りを打って目を閉じてしまった。
それは未だ謎のまま
(私は勘違いをしてるのかもしれない)
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