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黒子の世話を見てやれ。
それが、一年に課せられた雑務を免除するという条件で与えられたオレの仕事。
当然サボったりしたらキツいペナルティが待っている。
だが、
「マジでどこ行った黒子テツヤ」
今日はスティールのコツを教えてやるよと言っておいたはずなのに約束の時間になっても彼の姿が見当たらない。
ボールを持ってるだけで何もしてないこの姿が征十郎に見つかってはとてつもなくヤバイ。とにかくヤバイ。
「くろ」
「ここにいますよ」
「おわぁあおっ!?」
征十郎に見つからないように小声でもう一度呼んだ。
すると突然黒子は目の前にいた。何処からかやって来たとかではなく、既にソコに居たのである。
「いつからここに!?」
「最初からしましたよ。君より先にここに」
「うそぉ」
「ウソついてません」
口をへの字にして言う黒子。
そこまで言うなら本当なんだろう。オレが気付かなかっただけで。
「…おう、そうか」
腑に落ちない点はあるけどソレについて言い争っても仕方ない。黒子もなかなかの頑固者そうだ。
「まあいいか。征十郎にどやされる前にちゃちゃっとやるぜ」
「よろしくお願いします」
オレは小脇に抱えてたボールを、ダム、と弾ませた。
***
「はっ、はっ…」
スティールの練習を始めて数十分。黒子は息も切れ切れにしてオレを睨んでいる。
否、オレの手と床を行ったり来たりするボールを睨んでいる。
「そうボールにがっつくな黒子。先ずは相手の目を見るんだ」
目は正直だ。
大抵の選手なら目を見れば、その行動が手に取るように分かる。
そう諭せば、黒子の目がノロノロとボールから離れてオレのを見る。
「そうだ。相手の考えをよく読め」
そうすれば、ボールなんぞいちいち確認する必要もない
「…………」
「…………」
黒子の目がオレの目を通して探り始めた。
オレはこれ以上は他言無用だと思い、口を閉じた。あとは動き出すだけ。
「────ふっ!」
「…つっ」
オレが前傾姿勢になるのと黒子が右足を前に出すのはほぼ同じだった。
黒子のしっかりボールを見つめたまま、迷いなく手が伸ばされる。
────バチィッ!!
規則正しくリズムを打っていたボールは、オレの手から離れて後方に飛んでいった。
「なかなかやるじゃんテツヤ」
認めてやるよ、お前のコト。
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そもそも征十郎が引っ張って来たんだから才能はあるんだろ。コイツには。
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