オセロゲーム Part3 | ナノ
ちょっとずつ (1/4)




夏休み。
電車を乗り継ぎガタンゴトン。
都市中心部から少し離れた郊外の静かな海岸に、オレたち誠凛高校バスケ部は降り立った。



「あー、着いたー」

『腰がバキバキいいます』


長時間座ったままだから背伸びをするとちょっと辛い。


「磯の香りが……ハッ!いそがねば!」

「カントクは?」

「色々持ちこむ物があるから車だと。あと伊月だまれ」

『だ、そうです伊月先輩。残念でしたね』


伊月先輩のダジャレと主将のツッコミが健在で、見てるといつも楽しい。


「いい所っすねー」

「すぐ地獄に変わるけどね…」


先輩の顔色が悪くなった。
オレも、カントクの作った仮メニュー見たら吐き気がした。


「お」

『おぉ…』


駅を出て、しばらく歩けばそれは姿を現した。


「海だ!!泳ごう!!」

「合宿だ!!ダアホ!!」

『ビーチボールは準備済みです!』

「オレたちはバスケすんだよバカ!!」

『ちぇっ』


遊び心が足りないなぁまったく





 ***





「う〜ん…ビミョー……」

「つーか、ぼれぇ〜」


駅から歩いて数分。
民宿の波切荘へとやっと着いた


『お土産買ってきていいですか』

「すみません、トイレは」

「うるっせーよオマエら!!」


慣れない場所でそわそわし通しのオレらに、主将はいちいち叱り飛ばす。
そんな主将も実はテンパってることは、結構皆気付いてたりする。


「いやあ…いいじゃねーか。もしかしたらいるかもしんねーぜ、まっくろくろすけが……!」

「すげぇイラッとくるよ木吉。高校生なめんな!!」


鉄平さんの渾身の大ボケにとうとう主将がキレた。


『……あ、車』


その時丁度、ワゴン車が一台目の前で止まった。


「うん、時間ピッタリ。みんないるわね?」

「じゃあリコ、あとこれをあそこに置いときゃいんだな」

「うん、ありがとーパパ」


車から出てきたのはカントクで、なにやら車にはたくさんのモノが入ってる。


「おうガキ共、せいぜいがんばれよー」

「あざーすっ」


乗ってたのはグラサンかけた人相のあまりよくないオヤジさんだ。
けど雰囲気はそんなに悪い人ではないみたい。


「あ……けどな」

『?』


窓から手を振り、そのまま去っていくと思いきや、ブレーキをかけて車は止まった。


「娘に手ェ出したら殺すぞ」

「はいっっ!!」


しっかり脅して、パパさんは今度こそ去っていった。


『なにあれ怖い』


前言撤回。
やっぱり怖い人だ


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