やることは決まった (2/3)
真太郎が、火神を抑えられた理由…それは単に真太郎の方が強かったという理由だけじゃない。
「オレにはダンクしかない。選択肢が一つなら、アイツはタイミングを合わせて飛べばいいだけだ」
『そうかもしれないけど、火神君だってダブルクラッチぐらい…』
「できるけどよ……あれは左足で跳んで右手でボール持ってた時だ。が、きき足で跳ぼうとすればボールを扱うのは基本左手だ。けど実は左手だと叩きつけるぐらいしかできねーっつーか」
『つまり右手に比べて、左手のボールハンドリング下手なんだな』
「う゛…」
なるほどそうか。
高く跳ぶだけでは空中戦とは呼べない。そこからどう繋げて行くかが真骨頂というわけか。
「冬までにやることは決まった!何度でも跳べる足腰を作ることと左手のスキルアップ。オレは空中で自在に動けるようになる!ただそれを緑間に気づかされたのがムカつくぜ。だから走ってた」
『そう…』
別に自棄になって無闇に走っていたわけでは無かったようだ。なんかホッとする。
「……けどやっぱどいつもこいつも強えーな、"キセキの世代"」
火神はしみじみと言う。さっきの真太郎との1on1を思い出しながら言ってるようだ。
「緑間のDF一つとっても右で跳ばされただけだ」
「いえ……逆に言えばそれだけ火神君を警戒してたとも、」
『ん?どうしたテツヤ』
火神を挟んだ向こう側でオレと同じように並走しているテツヤが何かを喋りかけたが、言葉ではなく息を呑む音が聞こえた。
「…火神君は、"キセキの世代"に空中戦なら勝てるかもしれません。けど、地上戦で勝てないかもしれません」
走っていた足を止め、テツヤは素直に思ったことを口にしていくようだ。
「なんっっ」
『テツヤ、何を……』
「それにボクのパスも通用しません。火神君がダメなら今誠凛で相手をできる人はいません。けど今、思いつきました。火神君とみんなを活かすための……新しい黒子のバスケ」
「え?」
新しいスタイルを考えた。その言葉に火神は目を丸くしてテツヤを見つめる。オレももちろん同じだ。
「パス以外に僕だけのドライブを習得して、僕が"キセキの世代"を抜きます」
『!!』
黒子テツヤにしかできないドライブを修得する。それが彼が出した答えだった。
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