オセロゲーム Part3 | ナノ
この一歩は大きい (2/3)





『なあ火神君』


カントクが去ったあと、倒れたゴールを元に戻して早く1on1を再会したくて火神に声をかけた。
しかし彼は考え事をしているのか手を目の前に持ってきてグッと握っていた。


『おい火神君、聞こえて……?』


足音が聞こえた。
ザッ、とカントクのとは違う音。今度は気付けたことにホッとしながら、落ち着いて振り返った。


『ああ、』


誰かと思えば真太郎だった。
彼はオレの視線に気付くと挨拶代わりに片手をあげて通り過ぎた。
火神を一瞥して、そのまま通り過ぎようとしていた……が、


「む?」

「!?」


二人の視線は合ってしまった。
お互いの顔を見たとたんに青筋をたてる。


「……んだよ」

「用などない。ただ飲み物を買いに出ただけなのだよ」

「飲みもん…?ってしるこ!?よく夏にそんなもん飲めんな」

「"冷たい"に決まっているだろうバカめ」

「そーゆーこっちゃねぇよ!」


嫌いならスルーしてればいいのにと毎回思う。なのに何故この二人はそれが出来ないのかと不思議でならない。


「まったく。お前には失望したのだよ」

「なんだいきなり!」

「オレに負ける前に青峰にボロカスに負けたろう」

「ぐっ…次は勝つ!いつまでもあの時と同じじゃねーよ!」

「……フッ」


真太郎はゴールに残った火神の手の跡を見て鼻で笑った。


「まさか、"空中戦なら勝てる"などと思ってないだろうな?跳ぶことしか頭にないのか、バカめ」

「ああっ!?」

「高くなっただけでは結果は変わらないのだよ。この答えではまだ半分だ。オマエはそんなものではないだろう」

『おい真太郎、何しだすんだよ』


真太郎は持っていたおしるこをオレに押し付け、左手のテーピングを外し始めた。まさか真太郎直々に手解きでもしてくれるとでもいうのか?いやいや、まさか…



「オレが倒す前にそう何度も負けてもらっては困るな。来い、その癪にさわる過大評価を正してやる」



そのまさかだった。


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