本質を探る (2/3)
「は〜体いて……」
「いやぁ、やっぱ王者は強いな」
部活が終わり、夜の窓辺で日向と木吉が微睡んでいた。
「まあ…こんなもんだろ。むしろ勝った時は出来過ぎてた。正直、これが本来の実力差だろ」
「けど合同練習は良かったと思うぜ。いろいろ刺激になったよ」
「まぁな……考えさせられたよ。それにちょっと試したいこともあるしな」
日向の言葉の後に木吉は、何かを思い出したようにああ、と言った。
「そういえば日向、昨日の夜に藤井を外に連れ出してたよな」
「そうだけど…それがなんだ?」
「今日の藤井がさ、ずいぶん調子良さそうだったから」
何したんだよ?と木吉が身を乗り出した
「別に大したことしてねぇよ。アイツ、自分に自信がなかったみたいだからさ」
ちょっと助言してやっただけだよと日向は、外から聞こえてくるボールをつく音に耳を澄ませる。
「藤井はまだ強くなるよ。ただ、うまく見つけられてないだけで…」
木吉もまた、静寂の中に響く音を聞いた。
「……藤井ってさ」
しばらくの無音が続いたあと、日向はなんとなく口を開いた。
「なんでもできるけど、何にもないよな」
確かにオレらよりはずば抜けてるかもしれないけど…と日向は続けた。
「辛口だな日向」
「いやあこれくらいはヤツも気付いてたよ。だから今、変わろうとしてんだろうよ」
「違いない」
今日の練習試合でフォームレスシュートやスリーをあれやこれやと試行錯誤しながらやっていた藤井を思い出して、2人は笑った。
「確かにやればすぐできるのにな」
「でも青峰や緑間ほど完璧なわけでもない」
だったら、なぜアイツは"キセキの世代"に認められてたんだろうな。
2人は分けもわからず笑っていた。
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