きっかけがほしい (3/4)
───バッ
「あっ!」
『もーらいっ』
高尾が出したパスを藤井はカットした。
「行かせんぞ」
『おっと』
ボールを持とすぐに大坪に行く手を阻まれた。しかしそこで止まる藤井ではない。
──ビッ
「!!」
大坪が目を剥く。藤井はロール中にボールを放ったのだ。それはリングを無事くぐった。
「オマエ、そんな事もできたのか」
『できるようになったのはつい最近。大輝の見てたら自分もできるかなーって思って練習してたんだ』
まだ成功率はそこそこですけど。と藤井は呟いた。
「すげぇな藤井」
着々と点を縮める藤井をベンチから見ていた小金井は言葉を漏らした。
「そうね……」
「どうしたカントク、悩み事?」
しかしリコは口元に手を当てなにやら思案顔。一見調子よく見える藤井を始終目で追っていた。
「ねえ小金井君、今日の藤井ってパスをしたかしら?」
「え、うーん…木吉は見た?」
「いや見てない」
それどころかパスを受け取ったところも、誰も見ていない。味方がボールを持ってるとき、いつも貰わないようににさりげなく隠れてる。
気付いてない人が大半だが、リコだけはずっと気になっていた。
「(やはり原因はアレか…)」
桐皇戦の時の、日向君のファンブルを思い出す。過去に苦い思い出を持つ藤井の心を抉ったのかもしれない。
「どうにかまたパスをするようになるといいのだけど…」
「どうにかってどうやって?」
「コレばっかりは本人の問題だからねぇ」
何かきっかけは無いものかしら。藤井君との連携がなければ、うちだって勝てる試合も勝てない。
そもそも藤井のバスケスタイルはああいった個人プレイではなく"連携"にあるのでは、とリコは点数がいまいち伸びない試合を見ながら考えていた。
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