エスケープする (1/3)
「えー!?」
「藤井が学校来てない!?」
「はい。それどころか電話も一向に繋がらなくて…」
午前中は授業を受け、早めに昼食を済ませたバスケ部は試合会場に行くために一度体育館に集まっていたのだが、問題が起きた。
「風邪とか、まさか事故なんて…」
「いやカントク、それはないだろ」
リコが顔を真っ青にして取り乱す。
原因は藤井直也が時間になっても集合場所に現れない事だ。
連絡も繋がらない
「どうする?そろそろ出ねえとやべぇぞ」
日向がしきりに携帯で時間を気にする。
「…仕方ないわ。行きましょうか」
不安材料を抱えつつも、誠凛は会場へと向かった
***
「お―お―、さすがに決勝リーグともなると人の数が違いますなー」
秀徳が会場についたころには、たくさんの人が行き交っていた。
「高尾、チョロチョロするな」
「へーい……ん?」
視線をあちらこちらに漂わせていたのをたしなめられた高尾は、石畳を歩く1人の少年に目が止まる。
「(あれは……)」
確か誠凛の、と思ったがすぐに見えなくなってしまったのでそれ以上の詮索は止めた。
「あれ?緑間は?」
「来たくねーらしーっす。メールで"いやなのだよ"とだけ……」
「あははーブッ殺ス」
「悪い、ウチ軽トラ壊れたから。轢く以外で」
すぐにキレる宮地の言葉ももう秀徳にとっては馴れたもので、物騒な会話も平然と行われていた
「まあ今日は見る試合は主に片方だけだからな。C・Dブロックの泉真館対鳴成は正直、まず間違いなく泉真館だろう。鳴成もいいチームだが、王者との差は未だ大きい。決勝リーグの行方を左右するのはまず誠凛VS桐皇学園!!」
快進撃を見せる誠凛が、ひょっとすると何か魅せてくれるかもしれない
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