オレと君との温度差 (1/5)
予選トーナメントも終わり、実力テストも無事クリアした誠凛高校バスケ部は練習を再開した。
「ラスト10本!!」
「「「オウ!!」」」
決められた幅を、様々な動きを取り入れながら駆け抜ける。
その距離およそ20メートル。
コレがなかなか厳しい。
「黒子寝んなぁ!!」
テツヤがミスディレクション使ってこっそり休むくらいキツい。
「このあたりはちょっとだけ休みでよかったと思う……」
『同感』
皆が悲鳴あげながら練習している傍ら、ドクターストップがかかったオレと火神君は見学中だ。
「まわりよく見ろ」
「中入れ、中!!」
「手ぇ下げんな」
走り込みが終わると色んな大きさのボールでコート練をする。
しかしミニゲームではない
「藤井君、今日はどんなボールを使ったらいいかしら」
『んー』
カントクは暇そうにしているオレに、さまざまなボールが入った段ボールを見せた。
ハンドボールやバレーボールはもちろんテニスやソフトボール、ピンポン玉まで入っている。
これ全部練習で使うんだから驚きだ
『ピンポンは何に使うんですか』
「なんとなくよ」
使い道は特に無いらしい。
コレにする?とカントクは冗談で聞いてくる。
部員のために全力でお断りしますけど
『じゅあバレーボールで』
弾みにくい小さなボールは、パス練に最適だと思ったから。
「オッケー」
カントクはそのボールを持ってコートの方に戻っていった。
『暇だなー』
ボールが目の前にあるのに何もできないって結構辛い……
『(あれ?)』
バスケをやらないことってこんなに気にするもんだっけ?
もしかしたらこれがスキってやつなのかもしれない。
『……なわけないか』
一度嫌いになったもんは、そう簡単に好きにはなれない。
オレはそれを良く知ってる。
ゴンッ……
『ごん?』
悶々と頭の中で辛気臭いこと考えてたら視線の端にシュートした火神君が見えて、オレの意識はそっちに持ってかれた。
「あ!火神ィ、練習禁止っつったろーが!!」
すかさず主将が叱り飛ばしていた。
「や、見てたらがまんできなくて」
「秀徳戦で痛めた足、まだ治ってねーんだろ」
「大丈夫だよっす。もう全然……っつ」
「ほら見ろバカ」
『変な癖つくからちゃんと治ってからの方がいいよ』
経験者は語るんだから。
「休めって言われても練習するのは真面目とは言わないのよ」
「いてっ!!」
カントクはバコッと火神の頭を殴った。
「あと藤井君の言う通り。こーゆうのは繰り返すとクセになるからやめなさい!」
続け様に責められる火神君がちょっとふびんに感じたけど、まぁ自業自得というやつだ。
「幸い今年は大会側の都合で決勝リーグまで二週間あるわ。今週一杯は休養にあてるコト!明日土曜日は来なくていいわ……あ、でも藤井君はどうかしら?」
『明日ならもう大丈夫ですよ』
痛みも違和感も感じないから、そろそろ本格的に動かしても問題なさそうだ。
「そう、良かったわ。あと日向君!あとでメール回すけど、明日ウチ休館になったからいつものやつ時間のばすわよっ」
「う゛っ!」
『?』
いつものやつと言う言葉と主将の表情に疑問を感じた。
.
prev|back|next