似た者同士 (1/3)
『カントク……』
「ん?」
『ごめんなさい』
ベンチに戻って試合を眺めてたら、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「どうして謝るのよ」
『だってオレ、役にたってない』
せっかく正邦戦で気を使ってくれたのに膝がまさかの不良とか、笑えないにもほとがある。
「そんなことないわ藤井君。あなただって役にたってるわ」
『でも……』
だってオレ、明らかに出場した試合の数少ないし
「出た数がどうこうじゃないわ」
質よ。とカントクは言う。
「あなたがベンチで待機してくれているからこそ、黒子君のミスディレクションをより有効的に使う事ができる」
彼が抜けた穴をあなたが充分埋め合わせしてくれるからよと、カントクは微笑んだ。
『そう、なんですか…』
少し、楽になったような気がする
「さあ、応援頑張って頂戴!」
『はい!』
今のオレにできる、精一杯の笑顔を見せた。
ちゃんと笑えてるといいな
キュッ、キュッ…とスキール音が場内に響く。
しかしリングを揺らす音はまだ鳴らない。
『均衡状態に入っちゃったか…』
お互い何度かいいところまで持っていくのだが、そのたびに阻まれてしまう。
『……んお?』
しかし開始からおよそ3分がたった頃、秀徳にチャンスが巡ってくる。
秀徳の大坪がリバウンドでとったボールが高尾君を介して真太郎に渡ったのだ。しかも彼はフリー
───バッ
大きな大きな弧を描いたそれは、当然リングを潜る。
しかし誠凜もテツヤの超長距離パスで2点を返した。
『おお…』
あの長距離パスは故意なのか無意識なのか。
真太郎のスリーを抑制させるには十分な脅威となっていた。
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