対峙する (1/2)
まさか、成長痛が酷くなるなんて。
『ははっ、笑えねー』
バットタイミングすぎるだろ。
と、空を仰ぐ。
そよ風が…気持ち悪かった
「……何しているのだ、藤井」
『んー……』
振り向けば、緑頭の眼鏡が小生意気に見下ろしていた
『なんだ真太郎か。なんでここいんの』
「なんだとはなんなのだよ。お前こそこんなとこでふらふらしていていいのか?」
『オレはストレッチしにきたのー』
控え室は狭いから
「ストレッチなぜ………」
こんな早い時間からする必要あるのかと言おうとした言葉は途中で途切れた
「膝、悪くしたのか?」
サポーターを見て、真太郎の眉がハの字になる。
そういえば、コイツが「キセキの世代」の中で一番心配性だったっけ。
『その……せ………つ、う…』
「は?」
『だからっ、成長痛なんだ!!?』
「………………ぷっ」
『笑うな!』
真太郎の肩が小刻みに揺れている。
オレはどうしようもなく恥ずかしくなった。
『どうせ、高校生にもなってまだ成長痛か…とか思ってんだろ』
「いや……べつに…………くっ…」
『シメるぞ』
その眼鏡を潰してやる。
と手を伸ばすが、真太郎に掴まれてしまった。
「そんなことより藤井」
『?』
「おまえ、なぜ戻ってきた」
『───!!』
そうだ。
コイツは知っているんだ。オレがバスケ部を去った本当の理由
『……会えると思ったんだ。バスケを続けてれば…全国大会に出場すれば、アイツに会えると』
「会ってどうするつもりなのだ」
『オレを捨てた理由を聞く』
んでもって、オレの力を認めさせるんだ
「……ふん。だからって、オレは手を抜いたりしないのだよ」
『いいよ。足掻いて藻掻いて、勝ち取ってやるから』
「その足でか?」
『このくらいのハンデやるってんだからありがたいと思え』
「……楽しみにしてるのだよ」
真太郎は眼鏡のブリッジを上げて鼻で笑うと、アリーナに戻っていった。
オレはもう少し外でストレッチをしようて思う。
『………それにしても、』
雲行き怪しいなぁ……
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