1年夏、黒子と (1/6)
ペア練の最中、号令がかかると一軍のメンバーは体育館中央に集められた。
そこにはキャプテンと監督と征十郎がいる。
「…初めまして。黒子テツヤですよろしくお願いします」
黒子テツヤと名乗った彼は、深々と頭を下げた。
昨日までは3軍にいたそうな。昇格テストがあったわけでもないのに一軍昇格。
大方、征十郎に引きぬかれてきたのだろ。あいつ人を見る目はあるから。
「彼はいきなりの一軍入りでいろいろと戸惑っている。よく面倒見てやるようにな」
「「「「はい!」」」」
監督の言葉に皆威勢のいい返事を返した。実際のところ、ほとんどの人はよく思ってないだろう
「…じゃあ、暫くは藤井がペアを組んでやれ」
『はい』
丁度、ペア組んでたやつが辞めていったばかりで1人だったんだよね、オレ。
「話は以上だ。各々練習に行ってくれ」
監督がそれだけ言って帰ってしまうと、またいつもの部活風景に戻った。
『藤井直也って言うんだ。よろしく』
「こちらこそ」
隣に並んでみてわかったけど、黒子君はオレより小さかった。
『黒子君、160ある?』
「……多分」
『へえ』
オレより小柄なヤツが一軍に入れたなんて驚きだ。
きっと他の誰にも負けない何かを持ってるんだろう。
『(とてもそうは見えないけど)』
むしろ注意してないと直ぐに見失ってしまいそうなくらい影が薄い
こんな奴引っ張ってきてどうするつもりなのか
「……何か言いました?」
『いや別に』
征十郎のやる事に間違いはないから、きっとなんとかなるんだろ
『とりあえず、口うるさい先輩方から上手く逃げる方法を教えてやるよ』
冗談半分で言った。
てっきり怒られるかと思ったら、黒子は逆に笑った。
……気がした
『笑ってる?』
「ボクの最大の感情表現です」
保護者気分
(お前、面白い奴だな)
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