一難去ってまた一難 (1/3)
「直也ー」
『どうした柏木』
今日の柏木は弁当の箸が進まないほど元気がなかった。雪でも降んじゃないか。
「そろそろ夏休みだな」
『そうだな』
「バスケ部って合宿あるか?」
『あるんじゃねえの』
それがどうした。
「陸上部では夏合宿は山と海で二回あんだよね」
『へえ』
「それがさ、今年はどこの部活もそうっぽい。なんでだと思う?」
『知らね』
「コトの発端はバスケ部の女カントクにあるらしーんだわ」
『カントクが?』
なんだろう。
うちのカントクがまた無茶苦茶なこと言いだしたのかな…
『それで?』
ゴクリと、喉を鳴らした。
「"夏はやっぱり山と海でしょ"って、言いきったらしいよあのカントク」
『あー…』
そりゃ創立1年で決勝リーグまでつれていった実績を持つカントクが言うことだもんね、どの部活もこぞって見倣うに違いない。
「だから気を付けろよバスケ部も」
『いやでもウチって遠征多いから二回もやる余裕なんて…』
「なくてもやってのけるのが女カントクだろ」
『…………』
言い返せなかった。
考えれば考えるほど、そうなるんだろうなって思えてくる。
「ま、何にせよバスケ部は要注意だな」
『おう』
どちらかだけになってくれるのを切に願う。
***
そしてその日の放課後、部活後のミーティング。
「今年は夏休みの始めと終わり、海と山で合宿2回よ!」
『(やっぱり両方!!)』
ああ目眩が。
柏木に言われてたから心構えはしてたけど正直クるな、コレ。
「合宿は主に予選およびこの前の練習試合で感じた弱点克服が目的よ。さらに、ウチは少人数だから体力向上は不可欠。通常練習は今まで以上に走るわよ」
「夏休み明けたらウインターカップ予選はすぐそこだ。この夏休みをどこまで有効に使えるかが大事だ。気合入れていくぞ!!」
カントクと主将からそれぞれお言葉をいただく。
夏休みの大まかな予定と目的、それからこれからの目標。
『(ウィンターカップか…皆に対抗できるくらいの力をつけなきゃイケないな)』
己の力がいかに弱っちぃものか、この前の桐皇戦で十分にわかった。
「以上!解散!!」
「「「っつかれしたぁ」」」
合宿の話も終わり、とりあえず今日の部活は終了した。
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