光は休養中 (1/3)
「やーやーお早う。いや、おそよう直也!元気か!?」
『………』
うるさい男がやってきた。
イケメンなのになぜか暑苦しい。
「あっれー?聞こえてない?おいおーい」
『…………』
こいつに関わるといつもの10倍は疲れる。だから今朝からずっと避けてたのに
「酷いなー。久しぶりの出番だってのに無視するとか。オレ淋しかったんだよー?試合が合ったことなんてちっとも教えてくれなかったか観戦にもいけなかったじゃねーかコンチクショー」
『うるさいから黙ってろ。あとひっつくな』
オレの貴重な昼休みだぞ。
席に座って静かに読書させろって思う。
「ちょちょちょ、つれないな直也!っていうかこーいうやりとり何回目よちょっと!」
『六回目くらい』
「わかってらっしゃる!」
なんか耳元で一人漫才してる。
「まーなんだ、おつかれ」
ぽん。と、肩に手を置かれた。
『ありがとう』
柏木は誠凛の完全敗退を知ってるんだろう。
その上で、こうやって気遣ってくれる。試合から1週間も間を開けてから話題にしてくれたり、わざとバカやって笑わせてくれたり。
ウザイ奴だけど、そういう心遣いが嬉しかった。
「そんな直也にお約束のコレ!コンビニスイーツブーム真っ只中の今、どこに行っても売り切れ続出のイチゴミルフィーユをお届けにあがりましたぁ!!」
『おぉ…』
オレがここ二週間どこのコンビニに求め歩いても見つけることができなかった幻の…
いやはや輝いてらっしゃる。ミルフィーユが。
「これ食って元気だしな!」
『ありがとう柏木!やっぱオマエって良い奴だったんだな!』
「なにそれ心にチクっときたよ」
『気にしない気にしない』
オレは本を置いてミルフィーユとフォークを受け取った。
コイツからの贈り物をゆっくり学校で食べられるなんて初めてかもしれない
「なあなあ直也」
『ん?』
「隣のクラスの火神って奴、元気?」
『……なんで柏木が気にしてんの?』
「いや、マジバでバイトしてる友達がいんだけど。ソイツ曰く最近、火神を見てないらしいんだわ…アイツ部活行ってる?」
『………』
そりゃあ、あんだけ大食いの大男が毎日のように通ってれば、プツリと来なくなったのが気にはなるな。
『きっと多分元気だと思う』
「ずいぶんアバウトだな」
『最近見かけてないんだよね。オレも』
「ふーん」
柏木に言われて気づいたけど、たしかに火神君を見てない。
『元気なんかな……』
体調が、って言うより心の方が。
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