やがては漆黒に染められて (5/5)
誰の手にも渡らなかったボールは床を転がり、最後には大輝に拾われ向こうのリングをくぐった
「すまん藤井!!」
主将からの言葉はそれだけだった
また、まただ。
オレのボールはひとりぼっち。
「なんだよ!オレのせいだってのか!?」
「あんたが急にパスだすからだろ!」
「そもそもずっとワンマンプレーだったじゃん」
「そうそう。それを突然取れ、なんて無理だっつーの」
「おい、なんか言ったらどうなんだ」
『…オレは悪くない』
取れる位置にいたのに、取らなかったのはそっちだ。
「またそれかよ…」
「元一軍だかなんだか知らねぇけどよ、二軍のキャプテンは3年の矢部さんなんだ」
「好き放題やられては困る」
『…………』
あの寂しいボールが、ひとりコートの真ん中でたたずむその自分に重なる。
それから、終了を知らせるブザーが鳴るまで自分が何をしてたのかわからない。得点は112対63。
気が付いたら試合が終わってて、
気が付いたら控え室にいて、
カントクの話も右から左。
あと覚えているのは
笑顔の消えた、部員達
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