やがては漆黒に染められて (4/5)
以前、
──オマエとバスケすると酔う
と言われたことがある。
それは魅了されたとか感動したとかそんなんじゃなく、ただ単純に車酔いのような気持ち悪さが襲ってくるらしい。試合中に。
オレはヒトの特徴やリズム、癖を見つけるのが得意だった。
ハンドリングやドリブルも他の人には負けない自信があったから、その2つを活かしてバスケをしてきた。
相手の苦手なところにとことん突っ込んでリズムを崩す。
それも五人同時に相手したり、連携なるものの穴さえつっついた。
そういう不規則な…自分には慣れてないリズム、タイミング。予想してなかった動きやスキによって奴さんの三半規管が目を回すらしい。
たまに味方も。
時には自分で攻めたり、時には味方のアシスタントに撤したり。
オレはひとりでなんでもやった
結果、
──オマエとバスケすると酔う
に、繋がるわけである。
***
『まだ、だ…』
また大輝を抜けなかった。もう今吉も、うるさいセンターも謝りきのこも攻略したのに、コイツだけ…
『ちっ』
あと1分を切る。
得点は入れてるのにいかんせん戦況はほぼ5対1に近い。
オレがいくら頑張っても向こうは全員でかかってくるんだ
「なんだ、リタイアか?」
『ちげぇよバカ』
コイツだけ、まだ攻め入るスキが見つからない。
鈍ったかな、オレの頭も
──ダムッ
大輝が駆ける。
右へ左へとボールがゆらゆら、ゆらゆら。掴み所がなくて困る
『!』
とろうと思って出したオレの手。それをすり抜けてシュートが決まった
106対61。
差は、縮まらない
「藤井!!」
伊月先輩からロングパスが来て、受け取る。
ゴールはすぐそこなのに、ディフェンスが3人。大輝が居なかっただけましか
「行かせへんで」
『くっ』
3人は流石にきつかった
誰か、誰か来てるやつは…
『!』
オレのちょうど後ろに主将がいた。
フリーだし、決めたら3点だ
『主将!』
「え!?」
『あっ!!』
ノールックでバックパス。
でも主将は、パスのもらいやすい位置に居たにもかかわらず、わざわざスクリーンをかけに中に入ってきた
ボールは、ただ虚しく弾むばかり
なんで、
なんで受け取ってくれないの
あのボールが、
先の見えない闇に塗り潰された
中学時代と重なる
.
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