やがては漆黒に染められて (2/5)
「藤井君、ユニフォームは?」
『着てるよ』
「バッシュは?」
『カバンの中』
「アップは……」
『済んでる』
「ああ、だったらいいわ」
次々と出される質問に淡々と答えながら、ワイシャツとズボンを脱いでユニフォーム姿に藤井はなった。
『次、時計が止まったら出ればいいんだろ?』
「ええ。それで今の戦況なんだけど」
『ああ見てたから大丈夫』
平気平気。と、話し半分でバッシュの紐を結んでいく
「見てたぁ!?」
『最初からずっとね』
「だったら……」
言いたいことは山ほどある。
でもリコはそれを喉で止めた
「いいわ。あとで洗いざらい聞いてあげる。あ と で ね」
『…二回言いましたね』
「んー?なにか言ったかしら?」
『いーえー何もー』
早く出番が来てくれと、この時心の底から思った
「誠凛メンバーチェンジです」
それは意外にも早く来た。
きっと主将らの采配だろう
『そんじゃ、行ってきます』
「頼んだわよ」
とうとう、重い腰を上げた
『酔い止めは飲んだかい?大輝』
「心配ご無用。今のお前のバスケじゃあまだ酔わない」
『あっそ』
ならいいや。
藤井はラインを越え、一歩踏み出した
「頼んだぞ」
『あんまり期待しないでください主将』
主将に肩を二回優しく叩かれる。
カントクもそうだけど、こんなパッと現れた不孝行部員をすぐ試合に出すなんて、相当まいってるんだな
『でも、まあ…たまには全力でやっても良いかも』
「?」
『せめてものお詫びですよ』
エスケープして、みんなに散々心配かけただろうし。
オレがちょっとでも点差縮められたら、彼らに笑顔が戻ってくれそうな気がする
『バスケして喜んでもらうっていいね』
オレが、帝光でバスケを始めたのもコレが理由。
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